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【東京】

市民が犠牲になる戦争 ドイツ チェコ 虐殺や空襲体験を復刻

「ナチス占領下の悲劇 プラハの子ども像」を出版した早乙女勝元さん=足立区で

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 東京大空襲・戦災資料センター(江東区)館長で作家の早乙女勝元さん(86)=足立区=が今月、「ナチス占領下の悲劇 プラハの子ども像」を刊行した。第2次世界大戦の歴史的な現場を取材したリポートで、関係者の証言から市民が犠牲となる戦争の真実に迫っている。 (大沢令)

 かつて自身で著した「プラハは忘れない」(一九九六年)と、「エルベの誓い」(二〇〇一年)の二つのリポートで構成。版元の破産で現在は入手が難しいため、復刻版として合本し、一部自費で出版した。

 「プラハは忘れない」はナチス占領下のプラハ(現在のチェコの首都)郊外リディツェ村で起きた悲劇を追ったリポート。一九四二年六月、ナチス占領軍司令官が暗殺された報復として、村にいた男性はすべて銃殺され、女性たちは強制収容所に送られるなど村ごと破壊された。

 虐殺の悲劇を未来の教訓として伝えるため、村の子どもの群像をモニュメントに残そうと半生を制作に費やした彫刻家の思いに寄り添い、生き残った二人の女性の証言から惨劇を浮かび上がらせている。

 「エルベの誓い」では、四五年二月に米英軍がドイツの古都ドレスデンを破壊した無差別爆撃を取材。戦争を体験した女性二人の手記から、市民が受けた深刻な被害を浮き彫りにする。約二カ月後に米軍とソビエト軍の兵士がドレスデン近郊のエルベ河岸で交わした平和の誓いの舞台裏にもスポットを当てる。

 早乙女さんは「海外の歴史的な現場に立ち体験者に話を聞くことで、歴史や戦争の教訓がいくつも得られた。いずれ体験者がいなくなった時の追体験の資料として今出しておかなければと思った」と話している。新日本出版社、千八百円(税別)。

 

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