政府が西日本豪雨や北海道地震など大規模な災害を受けて3年間で実施する緊急対策をまとめた。自治体や民間の負担分も含めて事業費は7兆円に上る。
今回の対策は空港や河川、病院など各府省にまたがる重要なインフラや施設を点検し、早急な対応が必要な160項目をまとめた。厳しい自然災害が相次いでいるだけに、人命や生活を守り、災害時でも最低限の機能を維持する対策は不可欠だろう。
例えば、今年のような豪雨になれば甚大な被害をもたらす恐れのある河川が全国に120程度ある。流失したり、傾いたりする可能性がある鉄道の河川橋は約50、浸水時にコンテナが流出しかねない港湾は約30ある。
関西国際空港と同じように地下に電源設備がある空港も6つあり、非常用発電設備の増設が必要な災害拠点病院なども125ある。こうした地域では河川の合流部の堤防強化や橋の補強、大規模停電への備えが欠かせない。
ソフト面の対策も盛り込んだ。土砂災害の被害予測を地図で示すハザードマップの策定を後押しし、訪日外国人への情報提供を強化する。ハード面の対策にはおのずと限界があるから、円滑な避難を促す仕組みづくりや、混乱を防ぐ正確な情報こそ重要になる。
一方で、今回の対策をみると地籍調査や森林の間伐、鳥獣害対策など、既存の事業の看板をかけ替えただけにすぎない項目も目立つ。熱中症を予防するためのシンポジウムの開催のような、緊急性に乏しい事業も紛れ込んでいる。
各府省や部局の事業を薄く広く並べた印象もぬぐえない。例えば、密集市街地の防火対策だ。3年間で十分な成果を上げるのは難しいだろう。災害時に必要な資機材の確保などは本来、通常の予算で対応すべきではないか。
災害対策は必要とはいえ、もっと重点化した方がいい。予算の膨張を抑えるためにも、緊急対策の財源は既存の事業をできるだけ削って捻出すべきだろう。