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【社説】

COP24 実行へ、準備は整った

 ポーランドのカトウィツェで開かれたCOP24は、パリ協定の実施ルールを採択し、温室効果ガス削減レースの舞台は、整った。しかしまだ、スタートラインが見えただけ。ここからが本番だ。

 パリ協定。二〇二〇年から実施される温暖化対策の新たな国際ルール。地球全体の平均気温の上昇を産業革命以前の二度未満、可能であれば、一・五度に抑えるという大枠をまず決めて、三年前、パリのCOP21で合意した。

 締約国それぞれが、自主的な削減目標を申告し、その進捗(しんちょく)を検証し合うシステムだ。

 今回のCOP24は、それらの目標を実現するための実施指針(ルールブック)を決める重要な節目と位置付けられていた。

 論点は大きく二つ。ルールブックを先進国用と途上国用の二つに分けるか否か。途上国の温暖化対策資金をどうするか-。

 米中のつばぜり合いなど、危うい場面もあった。しかし、排出削減目標や進捗状況の検証には、共通の厳しい基準を適用。途上国への支援については、二〇年から二年ごとに将来の拠出額を示すということなどで、折り合った。

 海面上昇に直面する島国の「子どもたちの未来が危うい」という訴えを心に刻み、開幕前に示された「一・五度と二度では影響に大きな差異が出る」とする国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の特別報告書を追い風に、途上国と先進国がルールを共有したことで、パリ協定のスタートラインが見えてきた。

 米国の離脱表明など、不安材料も少なくない。しかし温暖化対策の主役は今や非国家だ。パリ協定の実施をにらみ、電力を100%再生可能エネルギーに切り替える目標を掲げるなど、脱炭素化に本腰を入れる世界企業も増えつつある。企業が変われば世界は変わる。見通しは決して悪くない。とは言うものの、現状では、地球の危機を救うにはほど遠い。締約国は自主削減目標の引き上げに向けて、一層濃密な対話を続ける必要がある。

 それにしても、会場での日本の存在感は薄かった。温暖化の元凶の一つとされる石炭火力へのこだわりは、多くの批判を浴びた。

 来年六月には大阪でG20のサミットが開催される。温暖化問題も当然俎上(そじょう)に載せる。今は高いとは言えない目標を大胆かつ速やかに練り直さねば、世界はますます遠ざかり、議長国としての発言力にも傷がつく。

 

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