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【社説】

地方選後の中台 挑発せず挑発に乗らず

 台湾統一地方選で蔡英文総統が率いた与党民進党が大敗し、中国が統一攻勢を強めている。台湾海峡の安定を守るには、民進党が中国の挑発に乗らず、穏健な対中政策を堅持することが重要である。

 民進党の惨敗であった。四年に一度の統一地方選では、台北や高雄など六直轄市を含む二十二県市の首長選の行方が焦点だった。

 民進党が首長ポストを得たのは改選前の十三から六へと半分以下となり、野党国民党は六から十五へと激増し、無所属が一ポストを得た。蔡政権は優遇されてきた公務員や軍人の年金改革に取り組んだものの、既得権益層の不満を抑えきれなかった。経済再生が実感できないとして、中間層にも蔡氏の改革路線への反発が広まった。

 経済大国の中国との関係の近さを背景に、景気対策の推進を強くアピールした国民党候補が強い支持を受けた面も否定できない。

 蔡氏は「結果に責任を負う」として民進党主席を辞任したが、地方選敗北は主に内政の失敗によるものだったといえる。

 二〇二〇年には総統選がある。一六年総統選で蔡氏が国民党候補を破り政権を奪取した背景には、同党の馬英九前総統の過度な親中路線への民衆の警戒感があった。

 地方選と違い、総統選では対中政策が大きな争点になろう。蔡政権は独立でも統一でもない「現状維持」路線をとってきた。

 地方選敗北で蔡氏の再選出馬に黄信号がともったが、総統選で民進党候補が国民党への対立軸として独立志向を強く打ち出せば、台湾海峡の波は高くなる。中台関係安定のため、民進党は抑制的な対中政策を継続すべきである。

 一方、中国は台湾への挑発的な態度を改めるべきである。中国は台湾と外交関係を持つ国に経済支援を通じた外交攻勢をかけ、蔡政権発足後に五カ国を台湾との断交に追い込んだ。ネットを使った民進党攻撃の選挙干渉もあった。

 地方選後に中国は、国民党候補が当選した自治体に中国の団体旅行客を送り込むなど、露骨な経済優遇策も発動した。

 台湾への干渉が中国が望む選挙結果につながったことは否定できない。だが、民主主義が成熟した台湾を力でねじ伏せたり、アメとムチで従わせることはできない。

 中国が将来の台湾統一を念頭に考案した「一国二制度」が香港で骨抜きにされ自由が失われていく現実を、台湾民衆が注視していることを忘れてはならない。

 

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