トップ > 中日スポーツ > 中部スポ > 記者コラム > 記事

ここから本文

【記者コラム】

進化続ける35歳 大相撲十両 豊ノ島 九州場所は「ハッピーな15日間」

2018年12月17日 18時0分

沙帆夫人(左)、長女の希歩ちゃんと一緒に13場所ぶりの十両昇進を喜ぶ豊ノ島

写真

 まだ空席が目につく十両前半の取組でも、2年ぶりに関取まではい上がった関脇経験者への声援は、爆発的だった。そう、今回の主役は東十両13枚目豊ノ島(35)=時津風=だ。九州場所、11勝4敗で千秋楽まで十両の優勝争いに絡み、健在ぶりを示してくれた。

 「中部の力士じゃないないんだけど」。コラム担当の上司から「待った」がかかった。その通り、豊ノ島は高知県宿毛市出身だが、元歌手の沙帆夫人(37)は富山県高岡市出身。力ずくでも首の皮1枚つながったところで、家族愛を力に駆け抜けたベテランいわく「ハッピーな15日間」へ…。

 幕内だった2016年名古屋場所前に左アキレス腱(けん)を断裂。2場所連続全休して十両からも転落した。幕下生活は12場所も続いた。

 男泣きで返り咲いた関取としての土俵は、沙帆夫人と長女希歩ちゃんに見守られ、初日から3連勝。「子供の女の子の声で『豊ノ島~』って聞こえたから、娘だと思い込んでね」

 その後は中盤にかけ、白星と黒星が交互に続く我慢の展開。「(15日間で)7番が2年。体に染みついて」と久しぶりの連戦、に体が悲鳴を上げかけた。そんな時は験担ぎで盛り上げ。福岡名物の梅ケ枝餅と勝栗を買い込み、七転び八起きにあやかって「達磨」の店名のラーメン屋に足を運んだ。「担げるものなら何でも担ごうと思うんで」。必死だった。

 執念実って11日目に勝ち越すと、12日目には愛妻から待望の連絡があった。「お給料が入りました。ありがとうございます」。約2年間の無給生活を、家族一丸で乗り越えた瞬間だった。

 「男として一家の柱として、ちゃんと仕事ができた」と笑うと、最終盤にも発奮材料が待っていた。14日目の11月24日は沙帆夫人との交際記念日。「勝ち越したら、付き合います」と宣言されていた2009年、同日に給金を直してお付き合いがスタートした。もちろん(?)今年も完勝した。

 3連勝で復活の1年を締めた35歳。「まだまだ相撲人生、終わらせないという自信になった。まだまだ進化しますよ」。2019年、幕内復帰へ準備は整った。   (志村拓)

秋場所で十両復帰を決めた豊ノ島

写真

 

この記事を印刷する

閉じる
中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ