パリ協定の指針合意ばねに削減策加速を

社説
2018/12/18付
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ポーランドで開いた気候変動に関する国際会議「COP24」で、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の実施指針が決まった。先進国から途上国まで立場の違いを越え、共通ルールの下で削減に踏み出せる意義は大きい。

日本も率先して温暖化ガス削減に取り組み、途上国への技術支援にも力を入れるべきだ。パリ協定が求める「最大限の野心」を反映した削減目標を設定できるよう、国内論議を早急に始めたい。

パリ協定は2016年に発効した。温暖化ガス排出量の測定、削減量の報告や検証法の指針などは未定で、COP24で決めないと協定が骨抜きになる恐れがあった。

国際環境は厳しい。米政権はパリ協定からの離脱を表明、ブラジルの次期大統領も離脱の可能性を口にしている。けん引役を果たしてきたドイツやフランスの首脳も国内問題に追われ、会議場には現れなかった。

中国や途上国は、温暖化に対してより重い責任を負う先進国とルールを同一にすべきではないと主張した。資金支援の増加などとセットで議論すべきだとの声も強く、指針を巡る交渉は難航した。

それでも、最後は「小異を捨てて大同につく」精神で妥協点を見いだした。背景にあるのは、猛暑や強力台風の襲来などによる温暖化への危機感の高まりだ。今後も全員参加を前提に、実効性を高める努力を続ける必要がある。

パリ協定は世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2度未満に抑え、さらに1.5度以下にとどめるよう努力する目標を掲げる。しかし、各国が提出済みの目標をすべて達成しても実現は難しく、削減量の上積みが必要だ。

COP24では日本の新型風力発電機や二酸化炭素(CO2)の回収・貯留、観測衛星などの展示や説明会が好評で、先端技術への期待の高さを示した。

見逃せないのは、温暖化ガスを多く出す石炭火力発電所をなくそうという国際的な機運が一層高まったことだ。英国やカナダの呼びかけで発足した「脱石炭火力国家連合」の参加国・組織は昨年の発足時の27から約80に急増した。

日本は参加しておらず、温暖化対策への熱意が伝わりにくい。パリ協定で作成を求められている、今世紀末にかけての長期戦略も未提出だ。石炭の扱いを含め、方向性をはっきり示さないと、本気度を問われよう。

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