技能実習の轍を踏まぬ制度に

社説
2018/12/18付
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政府は来年4月に「特定技能」という在留資格を新設し、外国人労働者を本格的に受け入れる。その際、念頭に置かねばならない点がある。多額の手数料を要求するブローカーが介在するなど、問題の多い技能実習制度の轍(てつ)を踏まないようにすることだ。

悪質な仲介業者やコンプライアンス(法令順守)の意識を欠く企業の排除が、信頼される制度づくりに欠かせない。政府は出入国管理法改正を受けた制度設計で、具体的な対策を講じるべきだ。

技能実習制度では、就労前の外国人に保証金や手数料を不当に支払わせるブローカーの存在が指摘されている。実習生が失踪する原因のひとつにもなっている。

特定技能の資格を設けるに際して政府は、外国人を送り出す国との間で2国間協定を結び、悪質な仲介業者を除くための情報共有を進める方針だ。

こうした協定の締結は妥当だ。ただし2国間協定では、相手国に不当な保証金などの徴収を禁じる規定を設けてもらうなど、踏み込んだ対策が求められる。相手国と連携して仲介業者への監視を強めることで、技能実習生の保護にもつなげてほしい。

企業は特定技能の資格で受け入れる外国人への生活支援を義務づけられる。NPO法人や民間団体が想定されている「登録支援機関」と契約し、支援を委託することも可能になる。

技能実習制度では実習生の生活支援をする「監理団体」という非営利団体に企業が多額の管理費を払い、実習生の賃金が減額される例が問題視されている。新制度では、企業による賃金支払いや労働時間などの違法行為も含め、監視体制を整えなければならない。

特定技能資格で働く外国人は同じ業種内などで勤め先を移ることが認められる。待遇の良い企業に転職しやすいよう、職業紹介を充実させる必要もある。

技能実習は早期に特定技能の制度と統合し、法令を順守した外国人の就労環境をつくるべきだ。

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