ソフトバンクは投資家の裾野広げるか

社説
2018/12/17付
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ソフトバンクグループ(SBG)の通信子会社ソフトバンク(SB)が19日に東京証券取引所に上場する。最大で2.6兆円を集める日本で過去最大の上場になる。

株式の9割が国内で売り出される。初めて株式に投資する人も含めて、個人投資家が多く購入する見込みだ。SBには株主にも、サービスの利用者にも長期でしっかり報いる経営が求められる。

SBの上場は、外部の投資家からすれば、携帯電話サービスで比較的安定した収入を得る通信事業に投資できる機会になる。SBG側には、埋もれていた通信事業の価値を引き出す狙いがある。

ただ、資本関係を完全に切り離すわけでないことには留意が必要だ。上場後もSBGがSB株の6割強を握る親会社であり続ける。こうした「親子上場」には、市場からの批判が根強くある。

大株主である親会社の利益が優先されてしまうと、持ち株数の少ない他の株主が不利益を被るといった事態が起きかねないからだ。

それだけに、SBは一般の上場企業以上に高い水準のガバナンス体制が求められる。社外取締役らが監督役になって独立した経営を保つべきで、投資家に向けた十分な情報開示が当然必要になる。

上場を目前に、大規模な通信障害を起こしたのは心配だ。また安全保障上の懸念から、華為技術(ファーウェイ)など中国製の通信機器が政府調達から事実上排除されることになり、中国製を多く使うSBも対応を迫られている。

携帯電話料金には、引き下げ要請が強まっている。楽天の新規参入で競争は激しくなるだろう。事業が成長し続けるには、魅力あるサービスを次々出さねばならないし、次世代通信規格「5G」などの新技術への対応も欠かせない。先を見据えた戦略が大事だ。

これまでの最大の上場案件だったNTT株は長らく低迷し、個人が株式投資から遠のく理由にもなった。SB株の行方は、日本の資本市場全体にとって新たな投資家の裾野を広げていけるかという意味でも、注目度は高い。

一方、SBGは投資会社の色彩が強まる。孫正義会長兼社長が先端分野に大胆に投資して成果を上げてきたが、浮き沈みも激しい。ファンドづくりで手を組むサウジアラビアが国際的に批判を浴びるなど不透明要因もある。しっかりリスクを管理し、株主利益を損ねることのない経営が望まれる。

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