不正入試は国の対応も問題だ

社説
2018/12/17付
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9大学が受験生の性別などにより配点を操作する不正を認め、1大学は志願書などを点数化する際に、浪人生らの評価を意図的に下げた不正の疑いが強い。

文部科学省は、医学部がある全国81大学を対象にした入試の緊急調査の最終報告を公表した。

わたしたちは各大学に、来春の医学部の一般入試の出願が本格化する12月より前に過去の不正入試の実態と、不正がなければ合格圏に達していた受験生の救済策をセットで公表するよう求めてきた。

来春の入学定員は、追加合格者を出した分だけ差し引かれ、受験生にとって狭き門になる。こうした情報をいち早く周知する必要があるからだ。

しかし、ほとんどの大学が時間を空費し、出願開始の直前に横並びで発表した。1大学は、文科省が不正の疑いを指摘したが、事実を否定。第三者委員会による調査に委ねられた。実態の解明は越年する。

混乱を招いた背景には、「入試の合否判定は大学の裁量」という対応を取った文科省の姿勢もある。不正は、文科省の現職幹部が東京医科大に便宜を図る見返りに自分の子供を裏口入学させた汚職事件で発覚した。こうした事情を踏まえ厳正に対処すべきだった。

東京医科大では、合格圏にありながら、不合格になった受験生のうち、今年度の定員を超過したとして、救済されなかった女子が5人いる。所管省としてどう考えるのか。しっかり説明すべきだ。

調査では、女子の合格ラインを男子より高く設定するなど明らかな差別が相次ぎ発覚した。「受験時は女子の方がコミュニケーション能力が高いが、入学後は差が解消される」ため、評価を「補正した」と釈明した大学もあった。

出産や子育てで系列病院の勤務を離れる可能性のある女子より、男子を多く確保したいという本音も明らかになった。入試という医師養成の入り口だけでなく医療現場の意識や、働き方をどう変えるのか。改革を急ぐ必要がある。

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