英政府・議会の責任ある対応が問われる

社説
2018/12/16付
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混乱が世界に及ぶことのないよう、責任ある態度をとる十分な自覚が英政府と議会にはあるのだろうか。欧州連合(EU)離脱をめぐる英国の迷走が目に余る状況になってきた。

離脱までの時間はあと3カ月余りしかない。結論を出せないまま無秩序な離脱に陥ることのないよう、英国の政治家は堂々巡りの議論を早く終わらせる必要がある。

離脱への最大の障壁は、メイ首相がEU側と合意した離脱案に英議会による承認のめどが立たないことだ。首相は下院での採決を11日に予定したが、与党・保守党からの造反で大差で否決される見通しになり、採決を先送りした。

その後の保守党の信任投票は乗り切ったものの、メイ氏への不信任票が予想外に多かった。首相のひざもとである与党の分裂が、事態打開を困難にしている。

与党内の強硬離脱派は、アイルランド国境問題が解決しない場合に英国全土をEUの関税同盟に残す「安全策」について、「永久にEUのルールに縛られかねない」と反発し変更を求めている。

EU側はメイ首相の苦境に配慮し13日の首脳会議で、かりに英国が関税同盟に残っても「一時的」と強調する文書を採択した。

だが、これで英国内の反対派が納得するかは不明だ。一方で最大野党の労働党は、EUとの関係を重視した、より穏健な内容の離脱を主張している。

問題は与党の造反組も野党も有力な代案を示すことができず、首相への批判に終始していることだ。これではいたずらに時間が過ぎるだけで、無責任のそしりを免れないだろう。

離脱案は来年1月までに英議会で採決される運びだが、このままでは可決は難しいようだ。否決となれば、その後の展開としてEUとの再交渉から離脱の延期、首相の辞任と総選挙、さらには離脱の是非を問う国民投票の再実施まで多様な案が取り沙汰されている。

いずれも最終決着への道筋がはっきりしないものばかりだ。EUとの合意なしでの無秩序な離脱は避けたい議員が多いとされるが、制御不能となって最悪の事態に至るリスクをどう防ぐのか。経済界の先行き不安も募っている。

ないものねだりの主張をぶつけるだけの「決められない政治」と英国はそろそろ決別してもらいたい。議会制民主主義の伝統を誇る国の英知が問われている。

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