オーバーロード アナザールート   作:むっちゃん!!

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 初投稿になります、楽しんでいただければ幸いです。
 一巻のアインズが遠隔視の鏡でカルネ村を発見する少し前からの分岐になります。そのため一巻冒頭のやり取りは原作順守です。


01 分岐

 モモンガは執務室の椅子に座りながら鏡に向き合ってる、鏡に映るのは動く白骨死体ではなく風にそよぐのどかな草原だ。それはつまりその鏡がただの鏡ではないということだ。

 遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートヴューイング)それがこの鏡の形をした魔法道具の名前で、遠く離れた所を映す鏡だ。 

 

 試行錯誤の結果やっと新しい使い方がわかってきたが、写るのは相も変わらず牧歌的な草原だけだ。初めて見たときは少しばかり感動した自然の風景も、さすがに見飽きてしまった。ちらりと後ろを伺えば即座に

 

「どうかなさいましたか?モモンガ様。何かございましたら何なりとお申し付けください」

 とセバスが声をかけてくれる。

 

「いや、なんでもない」

 そう言ってもう一度視線を正面に戻す、そのセバスの丁寧な言葉の中に少しばかり棘がある気がする。

 その原因にはモモンガは心当たりがあった、共としてついていたナーベラル・ガンマと、用意された近衛をおいて一人でナザリックから出ようとしたことだろう。セバスの気持ちもわからなくはないが、常に周りに人間がいるというのはただの一般人である鈴木悟としては、息が詰まるので勘弁してもらいたい。

 

 特にセバスはその負荷が大きい気がする、NPC達はどう思ってるか知らないがモモンガはつまらない人生を三十数年間の受動的に歩んだだけの平均以下の人間である。人間的な魅力あふれる初老のナイスガイに敬われるべき人間などでは決してない、むしろ顎で使われるべき存在だ。だから若いメイドやモンスター的な外見の近衛といるよりストレスが多きがする。昨夜少し怒られた事も多分に影響しているだろう。

 

 

 そもそもとして何故セバスと二人きりでこんなことをしているのかというと、自分も何か成果を出して尊敬してもらおうという事が目的だったのだけれども、これでは何時間かけても何の成果も生み出せない無能になってしまう、こんなことではいずれNPC達にも見限られてしまう――実際そんなことはそうそう起こり得ないのだが――だろう。

 

 (どうにかしなければ)

 

 そんなことを考えながら鏡をいじっていると、鏡に気になるものが写る。

 

「おっ!」

 そこに映ったのは今までの草原とは違う茶色の地面だ、それが細長く画面の右から左に続いている。道だ!

 その声に反応したのか、後ろからパチパチという拍手の音とともに、セバスが声をかけてくる

 

「おめでとうございます、モモンガ様。流石としか言いようがありません」

 はっきり言ってそこまで絶賛されるようなことはしてない気もするが、ここは素直に受け止めておこう。

 

「ありがとうセバス」

 そう答えて観察を続ける、見たところ石やコンクリートなどで舗装されていることも、線が引かれていたり柵がたてられることもなく、とても原始的な最低限の道だ。人が繰り返し歩くことで出来上がった道だろう、いや人とは限らないか、別に知能の低い動物の群れなどでも道が出来上がることもあるだろう。知性体の存在の証拠としては今一つ弱い――がこれはかなり存在する確率が高まったのではないだろうか。

 

 何もない所ばかり見ていても仕方ない、道があるのならばその先にきっと何かあるはずだ。さてどちらに進んだものか、少し悩んで左側に――モモンガは知らないが西に――視点を移動させながら倍率を下げより俯瞰的な視点へ変えていく。

 

 

 そしてついにモモンガはそれを見つける。

 それはユグドラシルではありえない広さの町、いや都市が広がっていた、その周りを長い城壁が囲まれているその城壁のところどころに門のようなものがあり人のようなものも見える。

 

「美しい――すごいな、これは」

 原始的な道から思い浮かべていた想像をはるかに超えた光景だった、そのあまりの衝撃に種族特有の精神抑制が幾度となく起こる。昨夜の無限に広がる星の海とは異なる文明的な壮大さがそこにはあった、あまりの衝撃に思考停止した精神が精神抑制によって正常に戻ってきた。

 

 その冷静な思考回路が遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートヴューイング)による偵察を即座に中止すべきと訴える。遠隔視の鏡は知名度の高いアイテムではあったが、実用性の高いアイテムかといわれるとそれは疑問だ、何故なら対情報系魔法にとことん弱いからである。つまり相手が対情報系魔法を使われた場合、相手に隠れられ、逆探知され、反撃されるのだ。

 

 今までは見る対象が小動物しかいないような草原で、ここが世界級(ワールド)アイテム 諸王の玉座に守られたナザリック内だったからだ。

 

 (ここは未知の世界、可能な限りの対策を行うべきだろう)

 

 多分の名残惜しさを感じながら、遠隔視の鏡を停止させるるとモモンガが写り自分自身と目が合い、後ろで不安げにこちを見るセバスとも鏡越しに目が合う。主人が突然黙り込んで効果を停止させられれば不安にもなるだろう。目が合ったに気が付いたのか、鏡越しに目をあわせたまま不安げに声をかけてくる。

 

「どうかなさいましたか、モモンガ様」

 

「これ以上のここでの偵察は危険だと判断しただけだ、心配はいらない。私はこれから二グレドの元へ行く」

 

「お供いたします」

 そう控えめだが強い意志を含まれた声だった。

 

 

 その時部屋にコンコンと二回扉がノックされる音が聞こえた、今この部屋にいるのはモモンガとセバスの二人のみである、モモンガが促すと一礼をしてモモンガの元を離れ扉に近づく。モモンガとしては自分はさーっと行って自分でドアを開けたいのだが、メイドたちの絶望した顔を一度経験したモモンガにはもうそんなことはできないだろう。

 

 セバスが扉越しに数言言葉を交わし、こちらを向き直り要件を伝える。

 

「アルベド様がおいでです。第二・第三階層の防衛についての相談があるとのことです。いかがいたしましょうか」

 

「構わん、通せ」

 

「はっ」

 そう言ってセバスが扉を開くと、そこにはどことなく口元の緩んだアルベドがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後にモモンガ様にお会いしてから、ちょうど6時間が経過した。次にお会いできるのはいつになるのだろうか。

 顔を目の前の書類から離し、何もないはずの空間を眺める

「あぁ、モモンガ様。」

 彼女が見ているのは何もない空間でもその先の壁でもない、その先厚い壁を隔てた愛しの御身がいるはずの場所である。顔をそちらに向けたまま、持っていたペンを置き、自由になったその白魚のごとき美しき指を机の下に潜らせ――

 

 (だめだ、今は少しでも早く命じられた使命を果たすべきだ)

 

 そう思いなおし机に下に行っていた右手を左手の薬指に這わせる、そこにあるのは以前はギルドアインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーのみが所持することを許された指輪、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンだ。

 昨夜、愛しの君の御手みずから下賜してくださった、あの瞬間を思い出すだけで体が悶えてしまう。この指輪の効果はナザリック内の一部を除くすべての場所への転移を可能にすることだ。

 

 (モモンガ様は『守護者統括として』指輪を渡すとおっしゃっていたが、そこに隠された意味がわからないほどアルベドは初心な女でございませんよ、フフフ)

 (あぁ、いつでもお呼びつけくださいませ、アルベドはすぐにあなた様の元に参ります。私の準備はいつでも万全でございますよ)

 

 右手で愛しの君からの愛の結晶を存分に撫でまわしたのち、満足したように視線を目の前の書類に戻す。そこに書かれているのシャルティアの管理する第一、第二、第三階層の現在停止している罠についての書類である。その内の多数は金貨消費型の物なので、使用されていない理由はわかるのだが、金貨を使用しないタイプの罠を使用していない理由がわからずにその理由を探していたのだが、どうにも見つからない。

 何かの手違いで使用されていないのだろうか、これは後でモモンガ様にご報告したほうがいいだろう。

 

 いや、

 いやいや、

 

 第一第二第三階層は最も敵の侵入の多い場所、この確認を後回しにするべきではない!

 

 いち早く確認を取らねば!!

 

 そうと決まれば即座にモモンガ様の元へ行かねば!!!

  

 そうと決まればナザリックの防衛のためにモモンガ様の元へすぐに行かねば!!!!

 

 新しい下着に着替えたらすぐに!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ここから分岐させていこうと思います、完結を目指して頑張っていきたいです。


設定間違いや書式の要望(句読点が少ない、改行が多いなど)ありましたら、優しく教えていただけると幸いです。




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