商標的使用(商標法26条1項6号) 法改正後、初の判例(知財高裁平成26年(ネ)10098)
商標法改正後、はじめて「商標的使用」について争われた判決が出ました。
商標権の侵害問題を検討するときに、まず入り口として考える必要があるのが、その使用が商標的使用(商標としての使用)であるかどうか。
特許や意匠とは異なり、商標特有の難しい論点です。
商標的使用については、過去の記事に詳しく説明していますが、
簡単に言うと、自他商品等識別機能を発揮する態様での使用かどうか。
端的な例としては、指定商品「ダンボール」に対して登録商標「巨峰」があるとして、
巨峰を売るためにそれを梱包したダンボールに「巨峰」と付したとしても、それはダンボールの出所を示すために巨峰と表示しているのではなく、中身の説明としての表示として巨峰と示しているに過ぎない、つまり商標的使用ではないから、商標権侵害ではないということ。
この商標的使用については、立証責任が原告・被告のどちらにあるか、侵害の要件の中での位置づけなど、色々論点があって面白いところだったのですが、
実は(こっそりと?)平成26年法改正において、新しいタイプの商標と同時に立法化されています。
(商標権の効力が及ばない範囲)
第二十六条 商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
・・
六 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標
この法改正によって、商標的使用でないことは、被告が立証すべき抗弁事由であることがはっきりしました。
そんな商標法26条1項6号が追加された法改正は、今年の4月から施行されていたのですが、改正後はじめて、本号の適用が争われた判決が知財高裁から出ました。
原審である地裁判決は、法改正前なので、商標的使用に当たるか、(侵害の要件として)論じられていますが、
高裁判決では、商標法26条1項6号に該当するか(商標的使用に当たらないか)が判断されています。
結論としては、地裁も高裁も変わらず、商標的使用ではないという結論でした。
微妙な差ではありますが、被告側の主張立証負担が増していて大変そう。
立法に向けた議論は全然目にしなかったのですが、改めて、なんで唐突に立法したんでしょうね。
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