一面「走る村」長野・売木村、思わぬ障壁 ふるさと納税返礼品見直しへ
ふるさと納税の返礼品を「寄付額の三割以下の地場産品」に限るとした総務省の方針を受け、全国で見直しを迫られる自治体がある中、長野県売木(うるぎ)村で、地場産ではないスポーツブランドのシューズやバッグが人気を集めている。同省の方針に逆行するが、特産品が少なく、スポーツ振興に力を入れる村の苦肉の策。ただ、見直しに従わなければ税控除の対象外となる見通しで、村は年内で取り扱いをやめる方向だ。担当者は「小さな村では地場産のみに頼れない。地場産の定義を考え直してもらえれば」と話す。 峠に囲まれた人口五百人余の売木村は、急峻(きゅうしゅん)な地形を生かしてスポーツトレーニングによる地域おこしを模索。二〇一二年、合宿に訪れていたウルトラマラソンランナー重見高好さん(38)を村の地域おこし協力隊員に起用。「走る村」として、合宿誘致などに力を入れてきた。 一六年からは「日本一過酷な大会」と銘打ち、八つの峠を越えるマラソン大会を開催。一七年度は合宿に約三千人が訪れ、今年九月には四百メートルトラック六レーンを備えたグラウンドが完成した。 村はさらなるPRに、マラソン大会などに協賛するヨネックス(東京)の協力を得て、十月から重見さんのサイン入りの同社スポーツ用品六点を、ふるさと納税の返礼品に加えた。農産物などを含め月五件ほどだった申し込みは、十月は二十九件、十一月は二十二件に。スポーツ用品への寄付額が半分近くを占めた。 これまで返礼品の主流はコメやトウモロコシなど地場産の農産物だったが、高齢を理由に廃業する農家が後を絶たない。人気のトマトも、供給農家三軒のうち二軒が、来年からやめることが決まっている。 総務省の担当者は「地場産に乏しくても、何もないということはないはず。難しいことは承知しているが、知恵を絞り、地元の魅力をPRしてほしい」と説明。清水秀樹村長は「『走る村』を応援したいという人が多くてありがたい。続けたいが、国に反発してまでは…」と複雑な心境だ。 (寺岡葵) <ふるさと納税> 故郷や応援したい自治体へ寄付をすると、2000円を超える分が住民税や所得税から控除される制度。返礼品として特産物などを送る自治体が多いが、寄付集めのために高額な電化製品や金券、地場産ではないコメやブランド牛などをそろえる自治体の競争が過熱。今年4月、総務省は返礼品を「寄付額の3割以下の地場産品」に限るよう通知。2019年度の与党税制改正大綱では、基準に従わない自治体を来年6月1日から税控除の制度の対象外とすることを明記した。 今、あなたにオススメ Recommended by PR情報
| |
Search | 検索