第21話 雲国斎の倅(せがれ) 「なんだかなあ。もうこんな親父相手にしてないで行こうぜ、むしゃ」。 むしゃぶろうのとなりで二人のやり取りを聞いていた又しゃぶ郎が言った。 「おい、なんだその方は。聞き捨てならんな。初めて会った目上の者に対して親父とは失敬な」。 「親父だから親父と言ったんじゃないか。それともお前さんそんな顔してじつはババアかい?。へへへ、やっぱり親父じゃねえか」。 「生意気な口を叩きおってからに、この子倅め」。 「うるせえ、親父」。 「だまれ子倅!」。 「親父」。 「倅」。 「お・や・じ?」。 「せ・が・れ?」。 又しゃぶ郎と雲国斎は顔を見合わせたまま止まってしまった。 「君たちなにしてんの?。あ?。どうしたって言うの?」。 「親父?」。 「また始まったよ」。 「せがれ?」。 「父上?」。 「又しゃぶ郎?」。 「父上!」。 「又しゃぶ郎!」。 「一体どうなってんの?」。 雲国斎がカウンターを乗り越え又しゃぶ郎の前に立った。 「げ、元気だったか」。 「はい」。 又しゃぶ郎は少し頭を下げた。 「お久しゅうございまする」。 「え、お前ら親子なの?」。 つづく |