第18話 Happiness is a warm Mushaburou むしゃぶろうは乳之崎村に帰った。そこに見たものは、変わり果てた故郷の姿であった。野や山は荒れ果て、部落の家々は焼け落ち、川はどす黒く濁り、人はおろか鳥達すらいない。 「なんじゃあ、こりゃあ」。 むしゃぶろうが村を出たのはわずか半年前のことである。あまりの変わりようにむしゃぶろうは声を失った。後を追っかけてきた又しゃぶ郎は、 「随分と静かなところだね。おしゃべりなお前には似つかわしくない故郷だな」。 と、むしゃぶろうに追いつくなり言った。 「父上や母上はどうしているのだろう?」。 命を狙われるほど憎まれてはいるものの、やはりむしゃぶろうとしては両親のことが気になった。さっそく実家に行ってみることにした。しかし、そこにもまた、予想だにしない事態が待っていた。 「ああ〜!」。 「どうした、むしゃ」。 (又しゃぶ郎はむしゃぶろうのことをいつしか「むしゃ」と呼ぶようになっていた。以前は「しゃぶちゃん」と呼んでいたが、自分もしゃぶ郎なので読者がこんがらかるのではないかとの配慮からくるものであった)。 「どうした、むしゃ」。 「ああ〜!。カレー屋になってる」。 一瞬怯んだむしゃぶろうであったが、気を取り直して歩を進めた。。 「入ってみよう」。 「よせ、むしゃ。これは臭うぞ」。 「屁こいたか?」。 「違う。怪しいと言うのだ。こんなさびれた、さびれてしまった村に、新装開店するカレー屋なんてどう考えても不自然だ。何かある」。 「たしかに。これは臭いな。しかし入ってみなければ何が起きているのか分からん」。 「しかし、迂闊に入ってとんでもない目に合うとも限らん」。 「とんでもない目?。どんな目だ」。 「そうだな。例えばだな、こんな感じだ。中に入るとカウンターがあって、丸いすが備え付けてあって、店員が立ってる。店員は若い娘だ。そして言うんだ。 『いらっしませ。どうぞこちらへ』。 座ると水と紙ナプキンが出てくる。 『大盛りにしますか、普通盛りにしますか?』。 『普通でいいです』。 『トッピングは福神漬けにしますか、らっきょうにしますか?』。 『らっきょうにしてください』。 『フォークで食べますか、スプーンで食べますか?』。 『それは、勿論スプーンで』。 『本物のカレーで良いですか?』。 『本物じゃないカレーがあるんですか?』。 『はい。当店では本物のカレー以外にもそれにごく似たもので、しかもより新鮮なものが御用意できます。一度お試しくださいまし。美味ですよ』。 『ああ、じゃあそれ貰おうかな』。 『はい、ありがとうございます』。 すると女は下着を膝まで下ろし、イチジク浣腸を3本立て続けに肛門に注入する。 『少々お待ちください』。 グルグルグルッとお腹が鳴ったと思うと、ビッシャーと出てきたものをご飯にかける。 『お待ちどうさま』。 『まあ、出来立てのほやほや』。 そんなカレー屋だったらどうする?」。 「なに馬鹿なこといってんだよ、くだらねえ」。 「いや、下ってんだよ。下痢だから」。 (編者註:やはりそうきたか) つづく |