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【社会】沖縄の市民、闘志新た 辺野古ルポ「諦めない。止めないと」
政府は十四日、沖縄県名護市辺野古(へのこ)の新基地建設に向け、沿岸部への土砂投入を始めた。米軍キャンプ・シュワブ演習場に隣接した砂浜では、市民たちが集まり、怒りの声を上げた。その様子に、警備員が境界のフェンス越しに目を光らせる。夏のような日差しが照り付ける中、集まった人たちは美(ちゅ)ら海に向かって「諦めない」と誓った。 (神谷円香) 宜野湾(ぎのわん)市の吉岡千絵さん(40)はこの日、午前八時すぎにカヌーで砂浜を出発し、土砂投入が行われる区域へ向かった。海上保安庁に警告されるのは、いつものこと。投入の様子は見えなかったが、土砂を運んできたとみられるダンプカーを見て「どんどんなし崩しになっていく。止めないと」と決意した。 琉球大への進学を機に熊本県から沖縄に移り、二〇〇四年からは仕事の合間を縫い、基地移設に反対する活動を始めた。当初関わった人たちの中には、亡くなった人もいる。県外からも人が集まるようになった。移設を巡る地元の移り変わりを見てきた。
市民の力で食い止めた部分もあるが、工事は進み、海に土砂が入れられる段階にまで来てしまった。「今日の土砂投入は、もう後戻りできないと印象づけようとする、政府のパフォーマンス。これからどうやって移設を止められるかを考えることが大切」と冷静に受け止めた。 翁長雄志(おながたけし)前知事の妻樹(みき)子さん(63)も抗議の声を上げた。「翁長の名前が玉城(たまき)デニー知事の邪魔になる」と表に出るのをやめようと思ったが、「黙っていられない、あまりにも情けなくて」と、辺野古入りを前夜に決めた。「翁長の女房ではない、一県民として来た。諦めるなんてとんでもない。県民は負けない」と国への闘志を新たにした。 糸満市の住職岡田弘隆さん(72)は「原発は地元同意がなければ稼働できないのに、基地は民意が反対してもできるのはおかしい」と憤った。「米トランプ政権は、世界のリーダーだったオバマ前大統領のような役割を放棄している。沖縄の基地は米国自身の負担になり、あと十年で米軍は沖縄から退くのでは」と推測した。 砂浜とは対照的に、辺野古の住宅街では、この日も静かな時間が過ぎた。住民の女性は「本当は基地はなくしてほしいですよ。でも、本当の気持ちだけでは生活できないから」とつぶやいた。以前はキャンプ・シュワブ演習場前も散歩で通っていたが、移設に反対する人がテントを設け、座り込むようになると「反対派だと思われるから、もう通れない」と複雑な思いを明かした。
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