国民にわかりやすい税制を

社説
2018/12/15付
保存
共有
印刷
その他

与党が2019年度税制改正大綱をまとめた。来年10月に予定する消費税率の10%への引き上げと、その景気への影響を和らげるための住宅取得や自動車保有への減税措置を盛り込んだ。

安倍晋三政権は消費税率の10%への引き上げを過去2回延期したが、今回は予定通り実施するとしている。そのために、増税前後の消費駆け込みと反動減をならすための対策を進めている。来週まとめる19年度予算案には、減税措置に加え、ポイント還元など歳出面の対策も盛り込む方針だ。

自動車関連税制では、現在の排気量や車体重量など「保有」に応じた課税から、走行距離など「利用」に軸足を移す抜本改革を20年度以降に進めるという。電気自動車(EV)やカーシェアリングの普及をにらんだ改革は妥当だが、実際に走行距離をどう把握するかなど制度設計上の課題は多い。

企業が納める地方税である法人事業税の東京から地方への再配分も、大幅に拡大する。法人事業税収に格差があるのは企業が東京に集中しているためで、格差をならすには企業の地方移転や起業など地方経済の活性化を進めるのが筋だ。地方への資金再配分はすでに地方交付税の仕組みがある。

税制は受益と負担がはっきり見えて国民が納得することが望ましい。その意味で今回の税制改正論議はわかりにくい。消費増税は少子・高齢化が進むなかでふくらむ社会保障費を賄い、財政を健全化するためのものだ。

増税に際し様々な減税や歳出を積み上げていけば、制度は複雑になり、国民には何のために増税して、それがどう使われるのか見えにくくなってしまう。東京から地方への税収再配分も、いきすぎれば自らの税収で歳出を賄う地方自治の原則が揺らぎかねない。

10%への消費税率上げの際は飲食料品などへの軽減税率も導入する。消費の現場で混乱が起きないような周知活動も必要だ。何のための納税か、国民に納得感のある税制の議論をしてほしい。

保存
共有
印刷
その他

関連キーワード

電子版トップ



日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報