―黒と緑の物語― ~OVER LORD&ARROW~ 作:NEW WINDのN
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エ・ランテルを出たアインズ達は隊列を組み進む。
その中心となるのは、依頼主であり、護衛対象者でもあるンフィーレア・バレアレの乗った馬車で、御者は彼自身が務めている。
その手綱さばきは手慣れたもので、よそ見をしたり、話をしながらでもしっかりと馬車を制御していた。
馬車を引っ張る馬は葦毛の馬一頭だけだが、この馬は、そのあたりの馬と比べてもはるかに立派な馬体をしており、まったく疲れをみせずにいる。その荷台は薬草採取用の道具や、保存する為の瓶や篭などで埋まっており人を乗せるスペースはない。
馬車の前を歩くのは、レンジャーの能力を持つ緑のフードの男、アロー。なおこのアローは、アインズがアイテム”
フードを初めとした装備品は緑で統一され、背中には矢筒を下げ、左手には大きな弓を持っている。
無駄な装飾などを省いた機能性を重視した一品であり、見た目以上の強度を誇る。相手の攻撃を受け止める盾の役目を果たすことや、そのまま弓で殴るということも可能で、下手な殴打武器よりも攻撃力はある。
また、弓だけではなく矢も、その名の通りに緑のカラーリングに統一され、さながら『アロー専用』という雰囲気を醸し出している。
背負っている矢筒は、”
馬車の隣に目をやると、パンドラズ・アクターが変身している漆黒の
エ・ランテルを出発して半日。ここまでの所はモンスターが現れることもなく平和な旅路が続いており、アインズはリアルでは味わえなかった美味しい空気と美しい自然……そしてンフィーレアとブリタとの会話を楽しんでいた。ブリタには冒険者の話や武器のこと、ンフィーレアには魔法のことやポーションのこと、そして世界の決まり事など色々なことを質問し、知識を得ていた。
「アローさん、そろそろモンスターが出てくる地域だって聞いているよ。警戒よろしくね!」
馬車の後方から、赤毛の鉄プレート女冒険者ブリタの声がかかる。
「了解した……」
話をしながらもアインズは警戒は怠ってはいなかったが、より集中力を高めることにする。
(まあ、出てきたところで我々の相手ではないが……)
カルネ村でアインズがスキルを使って作り出したアンデッド”
「むっ……どうやら、ちょうどお出ましのようだ。気をつけろ!」
一行の右前方にある森から姿を現したのは、人間の大人の3分の2程度の大きさの醜悪な顔の
「ヤバイ! アレは数が多いよ。まずくない? 逃げた方がっ!」
ブリタが声を上げる。
相手はさびた鉄の剣や棍棒・オノなど、バラバラの武器を手に持ち、ボロボロの革の鎧や、獣の皮などを身に着けた
人間ほどの大きさはある棍棒を持った
それに対し、こちらは護衛対象者を除けばたった4人。数の上でみれば圧倒的に不利な状況といえた。
冒険者たちからみれば
「……力は数に勝る」
アインズは、そう呟くと素早く矢をつがえ弓を構える。
「……まず私が数を減らす。モモンはオーガを頼む。ナーベはンフィーレアさんの方へ敵がいかないようにフォローに回れ。もし逃げる敵がいれば魔法を放て! ブリタさんは、ンフィーレアさんを守ってください」
「――了解した」
「……承りました」
モモンとナーベは即答し、それぞれ鞘から剣を抜き戦闘態勢に入る。
「ちょ、ちょっと! マジでやる気なの?」
ブリタは慌てながらも剣を構える。その顔は青白い。
「――当然だ。あの程度、ものの数ではない」
アインズは、ブリタの返事などは待たずに、矢を放つ。
ビシュッ!!
約200メートル先の
「ぐぎゃっ……」
矢は先頭にいた
「テメエラ、コロス!」
「クッテヤル、クッテヤルゾ!」
「シニヤガレ!」
仲間をやられ、怒りに燃えた
「ボゴッ!」
「ケハッ……」
しかしアインズの弓の速射の前に
「ぐるるるるっ!」
最初のオーガがモモンの前に立つ頃には、すでに生きているゴブリンは一体も存在しなくなっていた。
「おおおおおおおおおおっ!!! いくぞ、
モモンが気合をみなぎらせ、グレートソードを二刀流で構える。
「ヌオオオオオオっ!」
ザンッ!!
「ア?」
何が起きたか不思議そうな声をあげながら、袈裟斬りで一刀両断された
(パンドラよ、気合が大げさすぎだぞ……)
アインズは心の中で溜息をつく。
「うそっ!
「ぐおお?」
知性で劣ると言われる
「……無様な撤退だな。兵は神速を尊ぶという言葉を知らないのか。ナーベ、やれっ!」
「かしこまりました。……〈
ナーベの突き出した右手にバチバチッという音ともに魔力が集まり、一瞬の後、サンダーボルトが草原を奔る。
「シアアッ……」
雷に貫かれた2体の
「フンッ!!」
残る2体のうち1体は、モモンがグレートソードを高速で投擲するという常識外の荒業を見せ、物言わぬ肉塊に成り果てた。
「逃がさん!」
アインズは最後の一体の右足を射抜いて動きを止める。
「うががああっ!」
暴れて逃れようとする
「うおおっ!! あの技は……昨日のっ! あの巨体をぶん投げるなんてっ!!」
そう……この技は、昨日アインズが宿で見せた技。
アインズ自身も名称を知らないが、〈フランケンシュタイナー〉と呼ばれた技だった。
昨日よりもずっと威力が強かったため、叩きつけられた
「……ンフィーレアさんは無事かな?」
正直聞くまでもないことだが、依頼されている以上無事を確かめるのは当然のことだ。
「はい。おかげさまで……お見事な戦いぶりでした。今までにも色々な方の戦いを観てきましたけど、ここまで圧倒されたのは初めてです」
「すごかった! いや~昨日もすごいって思ったけどさあ。あんた達すごすぎるわ!!」
人間本当にすごいと思った時はそれ以上の言葉が出ないものだ。
「ナーベさんの魔法もすごかったです。あんなに威力のある〈
ンフィーレア自身が第2位階まで使える魔法詠唱者であるため、やはり魔法に目がいくのだろう。
「モモンさんもすごかったね。普通は両手で扱うグレートソードを片手に一本ずつ持って、あの
(実際人間じゃないからな!)
内心でアインズは思っていたが、当然口にはしない。
「アローさんの弓の腕前も素晴らしいですね。”三国一の弓取り”と言われても僕は信じますよ!」
なおンフィーレアのいう三国とは、リ・エスティーゼ王国・バハルス帝国・スレイン法国のことを指す。
「弓もすごいけど、最後の技なんて超人技ね。あのでっかい
この後、冒険者組合への提出する