巨大デジタル企業の支配力乱用を許すな

社説
2018/12/14付
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「GAFA」と呼ばれる米グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムなど、巨大デジタル企業に対して政府が監視や規制を強める契機になるのだろうか。

経済産業省や公正取引委員会がまとめた報告書は、独占禁止法をテコに、サイバー空間の巨人による寡占や優越的地位の乱用に歯止めをかける必要性を強調した。

デジタルの世界ではサービス拡大に伴う追加コストが製造業などに比べて桁違いに安く、その結果、市場支配力の極めて強い事業者が出現しやすいという特徴がある。ネット検索のグーグルや電子商取引のアマゾンが典型だ。

こうした巨大プレーヤーはビッグデータの蓄積などでサービスの質に磨きをかけ、人々や社会に利便と効率性を提供してきた。

他方で圧倒的な市場支配力を使って取引先に不当な圧力をかけたり、新たなライバルの登場を力でねじ伏せたりすることも、その気になれば可能である。

そうなると競争が制限され、技術やサービスの進化の芽を摘むことになる。欧州に比べて「サイバー寡占」への切り込みが甘いとされてきた日本政府が、遅ればせとはいえ、この問題に正面から取り組むことは歓迎したい。

デジタル寡占の弊害は、従来通りの独禁法の運用で対処できるものも多い。例えば巨大な購買力を武器に、取引先に不当な値引きや取引条件を強要する「優越的地位の乱用」がそれに当たる。

公取委はこれまでもアマゾンやアップルに対し、契約内容の是正を迫り、実現させた実績もある。独禁法40条に規定された強制調査権限も活用して、商慣行の実態把握と透明で公正な取引環境づくりに努めてほしい。

一方で過去の独禁政策の延長線上では対応しきれない問題もある。これまで合併審査では市場シェアの変動が最大の物差しだったが、サイバー空間では無料のサービスも多く、市場の確定が容易でないこともある。

プラットフォーマーが無料でサービスを提供する見返りに、他社への乗り換えを制約して利用者を囲い込んだり、知らず知らずのうちに大量の個人データを収集したりする問題もある。

各国政府との横の連携も強めながら、サイバー寡占特有の弊害にどう切り込むか。当局の知恵と実行力が問われている。

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