パワハラ防止は時代の要請だ

社説
2018/12/14付
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職場でのパワーハラスメント(パワハラ)について、厚生労働省は企業に防止措置を義務付ける方針だ。2019年の通常国会への関連法案提出を目指している。

パワハラは被害者の心身に大きな影響を及ぼす。休職、退職や、自殺に至ることもある。職場環境が悪化し、生産性低下や人材流出につながれば、企業にとっても損失だ。対策の強化は、まさに時代の要請だろう。

全国の労働局に寄せられる相談のうち、パワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」の件数は17年度、7万2千件に上った。6年連続でトップを占める。精神障害の労災認定も増加傾向にある。

セクハラや妊娠・出産した女性へのマタニティーハラスメント(マタハラ)はすでに、男女雇用機会均等法などで防止措置が義務付けられている。だがパワハラは法律がなく、企業の自主的な対策にゆだねられていた。

企業が取り組むべき具体的な内容は今後、指針で定める。相談窓口の設置や社内規定の整備などが想定されている。かたちだけでなく、実効性のあるものにしなければならない。

パワハラの背景に、過度な長時間労働やコミュニケーション不足があることも多い。どうすれば社員が力を発揮できる、風通しのよい職場にできるか。法制化を待つことなく、企業は改めて社内を点検し、対策を考えてほしい。

一方、中小企業を中心に、どう取り組んだらいいかノウハウがなく、とまどう声もある。政府は指針を分かりやすく具体的なものにするとともに、セミナーを開催して企業からの相談に応じるなど、きめ細かく支援すべきだ。

この問題を巡っては、労働側からパワハラの禁止規定を求める声も強くある。だが、適正な指導とパワハラとの線引きは、あいまいな部分もある。まずは防止措置を法制化するのが現実的だ。パワハラは許さない、という認識を社会で共有し、誰もが働きやすい職場をつくる一歩としたい。

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