チラシの裏の落書き帳   作:はのじ
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オリジナル らめぇぇぇ!!!

 ゲツォィ王国。

 

 南を海に面し、東西と北を大国に蓋をされた中堅国である。豊かな海洋資源と豊穣の大地。鉄鉱資源にも恵まれ周囲の大国から常に侵略を受けてきた歴史がある。三つの大国から見れば、目の前に美味しそうなホッペンゲがファフェフォーをぶら下げ、なおかつニャシーンと共に歩いているが如きである。手を出さないはずがない。

 

 ゲツォィ王国は建国以来、一国に、時には三国から同時に侵略を受けて来た。だがその全てを跳ね返してきた。

 

 ゲツォィ王国の兵の練度が高かったのか。――否。並である。

 ゲツォィ王国の兵の忠誠度が高かったのか。――否。一部是。

 ゲツォィ王国に歴史に名を残す軍師がいたのか。――否。一人もいない。

 ゲツォィ王国の生産する武器の賜物か。――否。並より少し上程度である。

 ゲツォィ王国の外交が巧みだったのか。――否。全方位に失敗した。

 ゲツォィ王国の統治が安定していたのか。――否。幾度も内乱を重ねた。

 

 三国同時に、三方向から攻められた最後の大戦から三〇年、最後の内乱から一〇年。ゲツォィ王国は漸くの平和を甘受する事が出来た。国王も大臣も戦争はもうこりごりである。

 

 とは言えのんびりしていては大国に攻められる。国王と大臣は頑張った。超頑張った。元々豊かな国である。長らくの戦乱に耐えれたのも豊かな大地、豊穣の大海、豊富な鉱物資源、数多くの人口の存在があったからだ。戦乱の時間が圧倒的に減り、充実した内政に時間を多く割く事で富国強兵はなった。統治も安定し貴族に争いの種は見当たらない。

 

 隙のなくなったゲツォィ王国に攻め入る国はもうないだろう。逆に大国に攻め入る事が可能な程強くなってしまったのだから。しかしゲツォィ王国はそんな事はしない。誰より、どの国より平和が一番であることを知っているのだから。

 

 ゲツォィ王国はこれより繁栄の時を迎えるのだ。

 

 若い国王と老齢の大臣は「平和が一番だねー」「ねー」と微笑み合いながら、テラスで穏やかに日を浴びながら、お茶をずーずーと啜る日々に幸せを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

「陛下、大変です! ソノテツホーシィ国が攻めてきました! その数一二〇〇〇!!」

 

 国王と大臣の優雅で平和な一時を破ったのは慌てた兵士の声だった。

 

「ほう。たった一二〇〇〇か。西の将軍、ラークショが既に動いている事でしょう」

 

 大臣はカップを片手に慌てない。こんな事もあろうかと軍備を整えていたのだ。西の砦には常時三〇〇〇〇の兵が詰めている。百戦錬磨のラークショ将軍なら楽勝に違いない。

 

「はい! ラークショ将軍が軍備を整え万全の体制で出撃済みです!」

 

 兵士はその通りだと返事をした。

 

「ははは。頼もしい事ではないか。昔であれば右往左往していた事だろう」

 

 富国強兵が成った今、ゲツォィ王国に怖いものはない。国王は勝ったも同然だとばかりにカップに口をつけた。

 

「下がってよい」

 

 国王に代わって大臣が兵士に下がるよう命令した。国王と戦勝祝賀会の相談をしなくてならない。忙しいことだ。

 

「あのっ……」

 

「どうした? まだ報告があるのか?」

 

 大臣は気が長い。これまで多くの部下を育てて来たのだ。気が短くては人の上に立てない。

 

「シグールイ男爵が……陛下にご挨拶をしたいと……」

 

 兵士の報告を聞き終わる前に国王が口に含んだお茶を吹き出し虹が出来た。

 

「「なんでそれを先に言わへんねん!!」」

 

 国王と大臣の口から同時に、ゲツォィ王国に古くからある方言が飛び出した。

 

「すんまへん!」

 

 国の頂点に立つ二人が顔を真っ青にして激高した姿に慄き、兵士の口からも土下座する勢いで方言が飛び出した。

 

「わ、儂は会わへんで! そ、そうや! 儂は今日お忍びでインランちゃんに会う約束やった! 大臣! 後は任せたで!」

 

 国王は椅子から立ち上がって、その場を去ろうとした。だが大臣にがっちりと腕を掴まれた。

 

「おい、どこ行くねん」

 

 大臣は笑顔で、しかし底冷えする程冷たい声で国王に尋ねた。

 

「どこって……城下にインランちゃんってええ子がおるんや。おっぱいでこうてな、『王様……王様……』ってええ声で鳴いてくれるんや」

 

 聞いてもいない事をペラペラ喋る国王。そんなこといいから離せと国王は大臣の腕を振り払うが、がっちり掴まれた大臣の腕は離れない。

 

「奇遇やな。ワイもインランちゃんっておっぱいのでかい馴染みの子がおってな。『大臣……大臣……』ってそりゃもうええ声で離してくれへんのや」

 

 奇しくも二人は兄弟だった。感動の暴露だった。

 

「あの……王様、大臣。そんな事言ってる場合では……」

 

 いち早く動揺から回復した兵士が国王と大臣を諌めた。睨み合う国王と大臣の間に火花が散るが、難しい問題は棚上げにして後の世に先送りするのが高度な政治的判断だ。海千山千の国王と大臣は瞬時に妥協した。

 

「兵士、シグールイ男爵を足止めしろ」

 

 大臣が兵士に指示を出した。

 

「あ、はい、ですがどうやって」

 

「そんなことは自分で考えろ」

 

「儂はおれへんって言っとけよ」

 

 自分に出来ないことは助け合う。政治には大切なことだ。ここは兵士に任せよう。大臣は兵士に丸投げした。国王は居留守を決め込んだ。

 

「やべぇよ、やべぇよ……なんで見計らった様に来んねんな……」

 

 国王は頭を抱えている。大臣も痛い程気持は分かる。内政・外政が落ち着き、頑迷に渋るシグールイ男爵を粘り強く説得し、領地の転封をしたのは大臣と国王だ。国内でも気候が最も穏やか、海の幸も山の幸も豊富、土壌も豊かな海沿いの領地。元々王家の直轄領にして王家秘蔵の行楽地。国内で最も安全な場所。シグールイ男爵の領地とはそんな場所だ。大国と領地を接さず、戦火から最も遠い場所。何より情報封鎖が簡単で国王と大臣の意見が完全に一致した。ここしかないと。

 

「陛下。来てしまった以上仕方がありません。ここは知らぬ存ぜぬで誤魔化すしかありません」

 

「そ、そうか、それしかないな」

 

 国王も落ち着いてきた。後は大臣に任せよう。国王には頼りになる大臣がいた。

 

 大臣も考えた。男爵への対応は国王に任せよう。国王の責務を果たすのは今しかない。大臣には尊敬すべき国王がいた。

 

 扉の向こうで兵士が男爵を止める声が聞こえた。

 

「陛下にご挨拶がしたい!」

 

「駄目です駄目です。お引き取りを」

 

「何!? 陛下はおられぬのか!?」

 

「居ますけど居ません! あ、大臣は居ますけど。とにかく駄目です」

 

「要領を得ないな! 大臣もいるなら丁度いい! 直接会ってお話を伺う!」

 

「あーれー。私は止めましたよー。止めましたからねー」

 

 兵士の言葉は誰に向かってのものか。兵士の健闘虚しく男爵を止めることは出来なかった。

 

 国王は思った。あいつ減給三割。

 

 大臣は思った。あいつ最前線に左遷。

 

 十日後、兵士は減給三割で最前線に異動になった。

 

「陛下! ご機嫌麗しゅう! シグールイです!」

 

 扉がバーン! と開いて男爵が現れた。シグールイ男爵家には歴代の王が無礼御免の免状を与えている。これくらいで咎めていてはシグールイ家はとっくの昔にお家断絶している。勿論国王も与えていた。

 

 国王が大臣に目配せした。大臣は一瞬驚愕に表情を歪ませるが、不退転の覚悟で国王を睨みつけた。権威は国王が上だが、気迫は大臣が上回る。年季が違った。国王は渋々男爵に声を投げた。

 

「お、おう、男爵。息災か」

 

「はい! 陛下のお陰を持ちまして!」

 

 男爵が帯剣したまま、づかづかと歩き国王の前で跪いた。シグールイ男爵家には歴代の王がいついかなる時でも帯剣御免の免状を与えていた。勿論国王も与えている。国王も大臣も自分の命の心配など欠片もしていない。

 

「し、して……今日は何の用なのかなぁ……って思っちゃったりして……」

 

 国王はもう分かっていた。男爵を見た瞬間から分かった。分かっているけど聞いた。その上でしらばっくれた。

 

「はい! 参陣のご挨拶に参りました!」

 

 男爵は全身を鎧に包み、いつでも出陣可能な出で立ちだ。

 

「ほ、ほう……参陣とな? せ、戦争でもあるのかなぁ……聞いているか大臣?」

 

「何のことだかさっぱりと分かりかねますな。きっと男爵の勘違いでしょう」

 

 この辺りは阿吽の呼吸だ。国王と大臣の呼吸はばっちりだ。

 

「そうでしたか! これは失礼しました!」

 

 国王はぐっと拳を握りしめた。見れば大臣も拳を握りしめていた。

 

「我が隊が先に情報を掴んだようです! 敵はソノテツホーシィ国! その数、輜重と合わせて一五六八二名! 率いる将軍は鉄血のワーキヤク将軍! 将軍の脇を墨守のソノニーと重攻のソノシー、二名の副将軍が固めています!」

 

 国王は膝から崩れ落ちそうになった。見れば大臣の膝が震えていた。

 

「……へぇ……すごい数だなぁ……でも……そうなのかなぁ……誤情報なんじゃないかなぁ……」

 

「いえ! 間違いありません! 私自ら数えて参りました!」

 

「ちょっ! おま!」

 

 大臣が口を挟んだ。気持は分かる。大臣が言わなければ国王が、お前何やってんの!? と叫ぶ所だった。冷静に。ここは冷静に。冷静になれ国王。

 

 男爵は大臣の言葉に首を傾げるも言葉を続けた。

 

「ですので家訓に従い出陣前のご挨拶をと罷り越した次第! では!」

 

「ちょ!」

 

 男爵が踵を返した。国王は手を伸ばしたが僅かに届かない。国王の指先をすり抜け男爵が機敏な動きで退出する。国王は慌てる。待って! お願いだから待って! と。

 

 しかしここにいるのは国王だけではない。大臣もいたのだ。大臣は加齢で弱った足腰に鞭を打ち、男爵の腰に両手両足を絡めて飛びついた。振り払う事は簡単だろう。だが王家に忠誠を誓い、大臣を深く敬う男爵にそんな事は出来なかった。

 

「でかした大臣!」

 

 国王は急いで男爵の腕を掴んだ。男爵が国王の手を振り払うなどあり得ない。これでとりあえずは大丈夫だ。

 

 見れば大臣が両膝と両手を床に突き、額に大量の汗を流してはぁはぁと息を吐いていた。後で腰を揉んであげようと国王は思った。

 

「の前に~~~ちょっと話をしようじゃないか、男爵」

 

「光栄です陛下! 私に否やなどあろうはずがありません!」

 

 国王はがっちり掴んだ手を離さず、テーブルまで移動した。

 

「男爵……お茶でもどうかなぁって」

 

「お気持ちだけ頂きたく!」

 

「座らない?」

 

「陛下と同じ席に座るなど滅相もない事です!」

 

「……あぁ……そう……」

 

 そうだ。シグールイ男爵家の者は例外なくこういう者だ。男爵の父もそうだった。

 

 一〇年前に起きた貴族の叛乱。男爵の父は最後まで王家に忠誠を誓い、男爵と同じく態度を最後まで変えることなく、叛乱貴族の首魁と刺し違えて死んだ。国王を最後まで守り抜いて。

 

「で、でね、王様思うんだけど、戦争に行くには少ーし男爵の年齢が若くないかなぁって……」

 

 国王は男爵の手を掴んだままだ。離した瞬間に飛び出しそうな強迫観念に駆られとても離せそうにない。

 

「陛下! 決してそんな事はありません!」

 

 男爵は直立不動のまま答えた。

 

「男爵は確か一〇歳だよね? 初陣には若すぎるんじゃないかなぁって……」

 

 シグールイ男爵。当年取って一〇歳。小さな体に鎧を纏い帯剣する姿は、騎士に憧れ、背伸びした子供にも見える。しかし国王は男爵家の人間がそんな甘い物だとは欠片も思っていない。

 

「お心遣いありがとうございます! ですがご安心を! 曾祖父様は七歳で! お祖父様は九歳で! 父上は八歳で初陣を済ませております! 先祖には六歳で初陣を済ませた者も! 私は一〇歳で未だ成らず! 恥ずかしい限りです! ですので決して若すぎるということはありません!」

 

 男爵が言う曽祖父は一八で、祖父は二一で、父は一九の若さで命を散らしていた。

 

 駄目だ。案の定男爵家の者に言葉は通じない。国王は男爵の手を掴んだまま途方にくれた。

 

「しかし、男爵の父上はどう思うだろうか。男爵にもしもの事があれば、王国の建国から存在し続ける名門中の名門の男爵家が絶えてしまう事だろう。決して父上も望まないと思うが」

 

 大臣が口を挟んだ。そうだ、ここは情に訴えるのだ。男爵の父が討ち死にした時、大臣も一緒にいたのだ。

 

 一〇年前、男爵の祖母、伯父、叔母の尽くが、当時王子だった国王をを護り抜いて戦死した。男爵の父が死ねば男爵家は血が絶える。死地に赴く男爵の父を死なせない為、当時王子だった国王は必至で止めたのだ。

 

『ご安心を! 妻が子供を身ごもりました! 我が男爵家はこれで安泰です! 思い残す事は何もありません! 王家に栄光あれ!!」

 

 昔から男爵家はギリギリの綱渡りでお家断絶をすり抜けていた。だが今回ばかりはそうはいかない。男爵には血のつながる遠縁の親戚すら一人もいない。当然兄弟もいない。残らず息絶えた。男爵が死ねば家名は残せても形だけだ。男爵家の血は完全に絶えてしまう。

 

 建国当時から度重なる戦乱で、男爵家は王家を、王国を命を以って支え続けた。戦争の度に、当主が、その兄弟が、妹が、妻が、母が、敵の軍勢を率いる将軍と刺し違えて来た。一人一殺。確殺だ。戦争では将軍を。内乱では首魁を。戦乱の度に数を減らし続け、今では男爵家は男爵ただ一人。しかも一〇歳。子は望めない。

 

 情だ。情に訴えるのだ。通じろ! この馬鹿に通じろ! 国王は祈りにも似た心持ちだった。

 

「誉です! 陛下を! 王家を! 王国を守る為にお家の断絶など何を惜しむ事があるでしょう! 父上も先祖も天上で喜んでくれるに違いありません!」

 

 駄目だ通じねぇし! しかも死ぬつもり満々じゃねぇか!

 

 国王は絶望した。だが掴む腕の力は強くなった。離せば矢の如く戦場に飛んで行くに違いない。そして刺し違えて戦死するのだ。

 

「いや、駄目だからねッ! 死んだら駄目なんだからねっ!」

 

 大臣使えねぇ! 王国の富国強兵に成功した大臣を国王は無能と断じた。

 

「もうラークショ将軍が三〇〇〇〇の兵を率いて迎撃してるから! 楽勝だから!」

 

 国王はぶっちゃけた。戦争を知らない(てい)など星空の彼方だ。

 

「存じております! ですが何が起こるか分からないのが戦争です! ここは万全を期すのがよろしいかと!」

 

 その情報網なんなの!? 一国より正確無比の情報網どうやって作ったの!? 万全を期すって男爵家の手段は一つでしょ!

 

 国王と大臣に残された手段は残り少ない。だが何としてでも止めなくては。出撃したらこいつ、確実に刺し違えて死んじゃう!

 

 こんな事態にならないよう、王国の最奥、最も国境から遠い領地に必至の説得でやっとの思いで転封したと言うのに!

 

 決して男爵家を疎かにするな。命を代価に命を助けられた歴代の王、全員が残した王家の家訓である。

 

「ね? 男爵が万全を期さなくても大丈夫だから今回はお休みしよう? ね?」

 

「死しても魂は護国の鬼となり、王国を守り抜く所存です!」

 

 聞いちゃいねぇ! 普段は穏やかなのに戦争になるとなんでこうなるの!?

 

 ぐぐぐっと少しずつ男爵の腕に力が入っている。振り払えないが偶然腕が離れたと言い張るつもりか。大臣に目配せすると大臣が男爵の背後に周りいつでも抱きつける体勢に入った。

 

「死んじゃ駄目だから! ね? 美味しいもの毎年一杯送っているでしょ? もっと人生楽しまないと! うちの娘まだ四歳だけど婚約してくれないかな? きっと美人になるよ! 楽しみだね!」

 

「いえ! 男爵家に甘えは許されません! 王国の盾となり! 王家の剣となり散りゆくのが我が男爵家の宿命です!」

 

「散っちゃ駄目だから!! 駄目なの!! ね!? そんな宿命ポイだから!」

 

 国王の握力は限界だ。ぐぐぐっと、一〇歳の子供とは思えない力で腕が離れようとする。大臣が腰にぐっと力を貯めた。

 

「我が命! 陛下に捧げます!」

 

「らめぇぇぇ!!! 間に合ってるからぁぁ!! 男爵に死なれると歴代の王に顔向けが出来ないのぉぉぉ!! 枕元に立たれちゃうのぉぉぉぉ!!!」

 

 王宮に国王の叫び声が響き渡った。

 

 ゲツォィ王国は安定期を迎え長期に渡り繁栄する。王国が衰退する時、男爵家が存続していたか、今は誰も知らない。

 

 

 

 




【ホッペンゲ】【ファフェフォー】【ニャシーン】
とても美味しいゲツォィ王国の特産品。
一度食べれば病みつきになるが、気候の変化に弱い。
こんなの見せられたら食べずにはいられないよね。


【ソノテツホーシィ国】
大国だけど鉄がどうしても足りない。
貿易して輸入しろよと言いたいところだが、これまでの関係上素直に「輸入してあげてもいいんだからねっ」とは言い難い。


【鉄血のワーキヤク】 
特筆すべき事は何もない。
足の裏が臭いくらい。


【墨守のソノニー】
ソノシーとは兄弟ではない。


【重攻のソノシー】
じゃんけんが強い。生涯通算で勝ち越している。


【ラークショ将軍】
いぶし銀の四八歳。単身赴任中。
孫が四人生まれたが、任地を離れられず、まだ一度も顔を見たことがない。
せめて名付け親になろうとしたが、尽く却下をくらった。


【方言】
ゲツォィ王国に伝わる伝統的な言語。
普段は優雅に言葉を矯正しているが、慌てると素が出てしまうのは貴族も平民も同じ。
一部の貴族は正式な文書に方言をぶち込んでくるので読み難いったらありゃしない。


【インランちゃん】
城下の一流娼館に勤める売れっ子娼婦。おっぱいがでかい。不断の努力の賜物である。
相手に合わせて様々な性格、反応、テクニックを使い分ける。
インランちゃんを指名する客は一〇〇人を超える。
一〇〇人は全員、インランちゃんが自分に惚れていると思っている。
病弱設定なのでバッティングしても大丈夫。ダブルヘッダー、トリプルヘッダーばっちこい。
国王と大臣が兄弟であることが発覚してしまい、インランちゃんの対応から性癖も酷似していると判断されるが、本人たちが知るよしもない。


【兵士】
最前線で一から出直す事になったが、運命の女性に出会い、軍を退役。
婿養子に入り、波乱万丈の末、五人の子と大勢の孫に囲まれ幸せな一生を送った。


【国王】
この国で一番えらい人。
基本無能。でも人を見る目だけはあるので、丸投げすると何もかも上手いこと行く。
王妃と仲睦まじいが、初めての火遊びがインランちゃん。
惚れられていると思って、妾にするか悩み中。
王子二人、姫一人の三人のパパ。
名君ではないが、繁栄の礎を築いた王として歴史に名を残した。


【大臣】
有能。超有能。独身。
見かけによらずまだまだバリバリ現役。
年季が明けたらインランちゃんを身請けしてセカンドライフを満喫したい。でも孤児院に多額の寄付をしているからお金が無くて無理っぽい。でも身請けしたい。でも財布が厳しい。
インランちゃんにラブぞっこん。
名宰相として名を残した。


【シグールイ男爵家】
 王国建国時からある名門中の名門。
 戦争の度に、内乱の度に当主が、その弟が、妹が、親族が、戦争相手の将軍・首魁と刺し違えて戦死。撤退を余儀なくしてきた。

 王家との婚姻と陞爵を頑なに固辞し続け代々変わらぬ忠誠を誓い続けている。

 歴代の王が全員、今わの際に、『男爵家だけは絶対に、何があっても、なんとしてでも断絶させるな』と言い残し王家絶対の家訓となった。




 顛末。

「君が死んだら今後誰が物理的に王家を守ってくれるのよ!?」

「ぐっ!」

 なんとか留まってくれました。
 現在男爵家では、お嫁さんを急募してますが王家と大臣が全力全開で邪魔してます。
 早急に王家の血を混ぜて、刺し違い戦法を留まらせる様に大臣と画策すると同時に外交に更なる力を入れ始めました。平和が一番。
 現在王家の姫は四歳。説得は困難な模様。













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