【小5女児事故死】交差点に潜む危険 横断歩道至近にバス停
- 特報|神奈川新聞|
- 公開:2018/09/07 02:00 更新:2018/09/07 13:16
戸部署によると、事故は同日午後4時20分ごろに発生。現場は信号機のない五差路交差点で、角に停留所がある。女児は外出先からバスで帰宅する途中だった。停留所と横断歩道との間隔は約5メートルと近接。このため、事故当時、縦長で高さのあるバスの車体は横断歩道をまたぐ形で停車していた。女児は降車後、バスの後方を回って横断しようとしたところ、対向車線の軽ワゴン車にひかれたとみられる。
運転していた自営業の男性(35)は「女児に気付いた時には、ブレーキが間に合わなかった」と供述。現場の制限速度(時速30キロ)を超える「時速35キロぐらいで運転していた」とも話している。
道交法は、横断歩道を渡ろうとする人の有無が分からない場合、ドライバーに徐行を義務付けている。署幹部は「(軽ワゴン車は)徐行するのを怠った。加えて、停車していたバスが死角になり、横断する女児に気付くのが遅れたのではないか」との見方を示す。
基準
県警によると、これまでにこの交差点で、死亡事故などはなかった。ただ、停留所と横断歩道が近接している形状に加え、近くの渋滞箇所を回避するための抜け道として利用され、交通量は少なくないという。こうした点を踏まえ、市営バスの関係者は「バス停車時には、必然的に対向車にとって死角になりやすく、危ない箇所と認識している運転手はいた」と証言する。
そもそも、バスの停留所の設置にあたっては、1997年に警察庁と運輸省(当時)が死角をなくすために「信号機のない横断歩道から30メートル離す」「交差点から30メートル離す」などの基準を設けている。
事故現場の停留所は、この基準を満たしていない。ただ、この停留所は基準ができる前の63年ごろに設置されたとみられ、県警交通規制課は「法的な問題はない」としている。
対策
幼い命が失われた事故を受け、県警や市など関係機関はこの交差点の改良を検討する協議会を近く開催する方針。
市交通局はこの停留所について、移設を含めた検討を開始したと明かすとともに、管理するすべての停留所2582カ所を点検する方針だ。担当者は「ほとんどの停留所が基準前に設置されたとみられ、問題があれば改善を検討する」としている。事故の直後から、停車しているバスの前後から道路を横断しようとする際の危険性や注意事項を周知する車内放送も始めた。
県警も県内全域で、停留所と横断歩道が近接している箇所の実態把握を進め、事故防止を徹底する考えだ。
「いつか事故起きるのではと」悲しむ住民
小学5年の女児がひかれた交差点は、以前から危険性が指摘され、関係機関で改良についての話し合いも行われていた。女児が通っていた小学校の関係者や、近隣住民は、快活で礼儀正しかった女児の在りし日の姿をしのび、事故の再発防止を強く願っている。
小学校の担任教諭によると、女児は学外のタグラグビーのチームに所属し、精力的に練習などに参加。活発で明るい人柄で、友人も多かったという。
校長は「朝、正門で明るく元気に『おはようございます』とあいさつしてくれた」と振り返り、「突然のことで心を痛めている。教員にとっても耐え難く、二度とこのような事故が起きないよう、できる限り取り組みたい」と話した。
女児を知る近隣の男性(79)も「登校時に顔を合わせると、はきはきと明るくあいさつしてくれた。いつも友達と楽しそうに話していたのに」と無念さをにじませた。
この交差点を巡っては、子どもたちが事故に巻き込まれる危険性があるとして、2016年に行政や警察、保護者らでつくる地元のスクールゾーン対策協議会の要望に基づき、横断歩道の移設で死角をなくしたり、歩行者が滞留できるスペースを確保したりするなどの改善策が検討されたが、具体的な取り組みには結びついていなかった。
交差点近くに住む2児の母親は「バスが停車すると横断歩道がふさがれるような形になるので、見通しを確保するため、必ずバスが発車するのを待ってから横断歩道を渡っていた」と、以前から安全に気を配って通行していたと明かす。その上で「バスの降車後に、ドライバーの死角になりそうな所から道路を横断しようとする人をよく見かけた。いつか事故が起きるのでは、と心配していた」と表情を曇らせた。
「見通しが悪く、信号機もないので、特に注意して運転している。かなりスピードを出して交差点を走り抜ける車があるのも事実」。現場を走行することがある40代の運送業の男性は証言する。
児童の登下校の見守り活動をする男性(74)は「見守りを強化して、通行する子どもや保護者らに注意喚起するなど、地域でできることはある。関係機関と連携して再発防止に取り組みたい」と、決意を新たにした。