---------------------------

----M----063-----------------
----a-----------------------------
----n-----------------------
----P-u-k-u--------------
-----------------------------------

---------------------------------------------------------------


(福子)うんっ!(真一)このダネイホンを日本中に売っていこう。(世良)そのためにはまずは東京進出やで 立花君。
(萬平)東京進出?東京?
(汽笛)
萬平さんたちが東京に向かったのは昭和22年の暮れ。
向こうに着いたらすぐに会社の物件探すで。
あと 社員寮にするアパートも。
分かってます。
(汽笛)
そして 泉大津に戻ってきたのはその3日後でした。
(ため息)
ただいま。
お帰りなさい。
♪「丸まってる背中に もらい泣き」
♪「恥じだって一緒に」
♪「あなたとならトゥラッタッタ♪」
♪「飛行機雲ぼんやり眺む」
♪「心ここに在らず」
♪「年間トータル もししたら」
♪「付き合うあたしすごい?」
♪「とぼけてる眉毛に もらい笑い」
♪「照れだってなんだって」
♪「あなたとならトゥラッタッタ♪」
♪「頑固で面倒で 腹も立つけど」
♪「あなたの情熱は」
♪「あたしの誇りで自慢で覚悟なの」
♪「もらい泣き もらい笑い もらい怒り」
♪「もらいっ恥じ どんと来い!」
♪「晴天も曇天も霹靂も」
♪「さあ あなたとトゥラッタッタ♪」
(鈴)品川。ええ。
品川に ちょうどいい空き家があったんです。
駅から歩いて10分。家賃は 月150円。
ほかにも いろいろ見たけどそこが 一番よかったんやて。
そこをたちばな栄養食品販売会社にします。
社員寮も決めたの?会社の近くに 戦災を免れたアパートが。
部屋が4つほど空いていたんでそこを借りることにしました。
本当に 東京進出するのね。
はい。 真一さんが営業本部長として出向します。
連れていく社員は 全部で6人。
誰にするの?
それは まだ これから。若い人が ええんやありませんか。
みんな若いやない。戦争で学校に行けなかった人たちよ。
学校?
ダネイホンが売れたらその人たちに奨学金を出して夜学に通わせてあげたらどうでしょう。
ああ なるほど。
そんな余裕があるのかしら。
ダネイホンは 絶対に売れます。
分かった。 東京に連れていくのは若い連中にしよう。
きっと喜びますよ。
まあまあ まるで あの子たちの親みたい。
そら そんな気持ちになるわよ。
ならなくていい。 それより 早く源ちゃんに 兄弟をつくってあげなさい。
2人目よ 2人目。
分かったから。萬平さん。
はい 僕も分かってます。
(堺)僕らが?(小松原)東京に?
そうだ。 東京で働いてくれ。
(倉永)ええ…。
嫌なの?
(倉永)せやかて…。(増田)東京は 怖いとこなんですやろ。
(堀)大奥様が東京は 冷たか人ばっかりって。
そんなことはない。
僕たちも東京に行ってきたけどみんな親切だったぞ。
(神部)東京に行けるなんて願ってもない話やで。
いずれ 君たちには奨学金を出そうと思ってる。
えっ。奨学金?
(真一)仕事が終わったら夜間学校に通うんだ。
夜間学校?みんな戦争で勉強どころではなかったでしょ。
その分を しっかり取り返せるわよ。
か~っ! こんな ええ話ないで!羨ましすぎるわ!
君も東京に行くんだぞ 神部君。
えっ…。何のためにここに呼ばれたと思ってたんだ。
みんな まだ若いからしっかりした先輩がいないと。
せやかて 俺やのうても…。
東京進出には たちばな栄養食品の社運が懸かっているんだ。
真一さんの右腕としてみんなを引っ張ってくれ。
神部さんがおってくれたら安心や。 なあ。はい。
頼むで 神部君。
はい…。
(野村)ええなあ 東京。(佐久間)わしが行きたかったわ。
いやいや 僕ら全然浮かれてませんよ。
遊びに行くんやないもんな。
(長久保)せやけど学校に行かせてもらえるんやろう。
(赤津)羨ましいな。赤津さんたちは 学校に行ったとでしょ。
僕ら 戦争でろくに勉強でけへんかったんやから。
それに ダネイホンが売れたらっちゅう条件つきですよ。
(大和田)ほな 向こうで頑張るしかないな。
(森本)自分が東京に行ってどんな仕事するんかお前ら分かっとるんか。全然分かってません。
(高木)何や それ。(峰岸)大丈夫か お前ら。
(岡)頼むで ほんまに もう。
神部さん。
ちょっとええ?
克子姉ちゃんから聞いたわタカちゃんのこと。
えっ…。
タカちゃんが卒業したら結婚するんでしょ。
はい。
びっくりしたわ。私 全然 知らんかったから。
ほんだら 何で… 何で俺を…。
何で僕を東京にやるんですか。
何でタカちゃんと離れ離れにするんですか。
これは意地悪や!
そこまでは思うてません。ほんまに?
お… 思うてます。
ごめんね。
神部さんが落ち込むのもしかたないと思うわ。
せやけどねまだ2年半も先の話でしょ。
それまでに 神部さんは大事な仕事を任せられるようになってタカちゃんを養えるお給料をもらえるようにならないといけないやない。
はい。
赤ちゃんができたらもっと しっかりしないといけないのよ。
赤ちゃん…。
そうでしょ。
はい。
しばらくは さみしいかもしれないけどタカちゃんは まだ学生なんやから結婚するまでは学業に専念させてあげなさい。
分かりました。
ありがとうございます 奥様。
その週末 いつものようにタカちゃんがやって来ました。
(泣き声)
泣くな タカちゃん。(タカ)せやかて… せやかて…。
毎週 手紙書くから。離れ離れになっても一日たりともタカちゃんのこと忘れへんから。
ほんまに?
約束する。
そしたら 指きりして。
うん。
♪「指きりげんまん 嘘ついたら針千本」
♪「針3千本飲ます」
3千本!?そうや。
普通は 千本や。
3千本やったら困るの?約束破るの?
いや 3千本でええ。1万本でも ええぞ!
♪「指きりげんまん 嘘ついたら」
♪「針1万本飲ます 指きった」
萬平おじちゃん。 どうぞ。ありがとう。
福子おばちゃんも どうぞ。ありがとう タカちゃん。
大奥様 こっちも お代わり下さい。わいも お代わり下さい。
おばあちゃん それ 私やるわ。
優しいなあ タカは。
(克子)そう タカは納得したの。
うん。 ええ子やわ タカちゃんは。
ほんまは きっと つらいやろに。
神部さんが大人なんよ。私は結婚に反対しないわ。
私はって忠彦さんも賛成してるんでしょ。
どうやろ。えっ どうやろって?
近頃 あの人の描く絵が暗うて陰気で…。
(克子)あれは 自分の心境の表れや。(ため息)
忠彦さんが結婚を勧めたのに?
(忠彦)何見とんねん。
せやから 後悔してるんやって。
学校卒業して すぐに結婚する子はたくさんいるやない。
年の差かて萬平さんと私と おんなじやし。
う~ん そうやけど。
あっ…。 神部さんが大阪帝大出てるのにうちみたいな小さい会社に入ったから?
大阪帝大出てるのに克子姉ちゃんの家に泥棒に入ったから?
あ… 福子。大阪帝大出てるのに…。
もうやめて。 私も不安になってきた。
あ… 今のは忘れて。
東京に作ったたちばな栄養食品販売会社の開業が2週間後に迫った2月の初め世良さんがやって来ました。
宣伝放送?
そうや。ダネイホンの宣伝放送をやるんや。
何ですか それ。大阪の街なかでも流れとるやろ。
チャカチャチャチャチャチャチャスッチャンチャン。
娯楽の殿堂道頓堀ミュージックホール。
あでやかなダンサーがお色気たっぷりに踊ります。
チャカチャンチャンチャン。ハハハハハ。(拍手)
これを東京中で流すんや。いや 東京だけやない日本中の商店街で流さなあかん。
娯楽の殿堂って。いや それは違います お義母さん。
でも あれは 人を雇ってしゃべってもらうんでしょう。
金がかかるんや…?さすが真一さん。
ええとこに気ぃ付いたな。そこも ちゃ~んと考えとる。
人に しゃべらすんやのうてレコードで流せばええ。
レコード?ああ。
レコード作って全国の商店街に送るんや。
そんな レコードって簡単に作れるもんなの?
はい 金さえ出せば作れます。
せやけど これからずっと宣伝していくことを考えたら人を雇うよりも安い。
いや~ さすがは世良さんや。
商事会社をやってる人はやっぱり違いますね。
当たり前や。 ダネイホンをどうやって日本中に売ろうかと毎晩寝んと考えて ひらめいたアイデアや。
で どういう内容を流すんですか。
それも もう考えとる。
これは 福ちゃんに しゃべってもらうで。
えっ 私!?(世良)ああ。福ちゃんは 元電話交換手で元ホテルのフロント嬢やろ。さあ 読んでみい。えっ…。
「栄養満点ダネイホン。美味しい美味しいダネイホン」。
もっと うまそうに しゃべらんかいな。
「栄養満点ダネイホン。美味しい美味しいダネイホン」。
(世良)おお。
「萬平印のダネイホン」。
萬平印?えっ? 萬平印?
萬平印って?(世良)決まっとるやんけ。
立花萬平が作ったからや。 実はな看板も貼りまくろうと考えとる。
看板?デザインも もう考えた。
これや!
これは…。萬平君!?
おお。 社長の立花君にも宣伝に一役買うてもらうで。
萬平印のダネイホン。
嫌です。
嫌て。
嫌だ!
(世良)何でや!萬平さん!


a day ago via Twishort website