温暖化で世界の穀物 年4・6兆円の被害 農研機構 米は品質劣化

 農研機構は11日、地球温暖化の影響で小麦や大豆、トウモロコシといった穀物の平均収量が減り、その被害額が世界全体で年間424億ドルに上ると発表した。日本円では約4兆6640億円(1ドル=110円で計算)。品目別では、トウモロコシが223億ドル(約2兆4530億円)で最も被害が大きい。米は、生産額に影響はないが、品質劣化が問題だと説明。温暖化への適応策の開発・普及が急務だとした。穀物の多くを輸入に頼る日本の食料安全保障政策の見直しが重要になりそうだ。

 被害額の推定は世界で初めて。国立環境研究所と気象庁気象研究所と共同で取り組んだ。

 気候データベースを用い、2010年までの30年間でトウモロコシと米、小麦、大豆について、平均収量の推移を世界全体で推定。温暖化が起きなかったと仮定した場合の平均収量と比べた。

 トウモロコシの年間平均収量は4・1%の低下で、生産量世界3位のブラジルの2年分の生産額に相当する。小麦の被害額は136億ドル(約1兆4960億円)、大豆は65億ドル(約7150億円)となった。

 同機構・農業環境変動センターは「世界の人口増加に対応するには、品種の育成など緊急の適応策の開発と普及が必要」と強調する。

 18年度の日本の穀物自給率(飼料用含む重量ベース)は28%と輸入穀物に大きく依存している。同センターは「海外で同時多発的に異常気象が生じれば、輸入が難しくなる」と指摘。国内でも生産技術の開発が重要とし、食料安全保障の観点から、見直しが必要だとした。

 日本の食料自給率(カロリーベース)は38%。食料・農業・農村基本計画では、45%に引き上げる目標を掲げている。
 

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