こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。国会では文書の書き換えだか改ざんだか、どっちでもいいけど、それでもめてます。野党はあれを前代未聞だと糾弾してますが、それはまちがいです。前代未聞ではなく、日常茶飯事です。
そんなもん、いまにはじまった話じゃなく、ずっと前からやってたに決まってるじゃないですか。たとえば『週刊ダイヤモンド』の2009年4月11日号では、官僚による文書の隠蔽や改ざんが横行しているという特集記事が組まれてます。当時もいろいろ発覚して問題となったようですが、みなさんもうすっかりお忘れのようで。
去年ですか、製鉄会社など複数の大企業で製品の品質データ改ざんが発覚しました。そのとき、経営評論家だかコンサルタントだかのオッサンが、「むかしの日本の経営者には気概や矜持があったからそんなことはしなかった」などとおっしゃってましたが、かわいそうに、昔はよかった病患者特有の妄言症状です。文書やデータの改ざんや捏造など、官民問わず、むかしから普通にやってたことをご存じないとしたらあまりにも無知です。
私は『会社苦いかしょっぱいか』の単行本書き下ろし最終章で産業スパイについて取りあげました。詳しくは本を読んでいただきたいのですが、調べていてなにより驚いたのは、昭和の企業人たちの順法意識の低さです。産業スパイ事件が発覚して逮捕者が出ても、盗まれるほうがバカなんだ、盗んでつかまるのは運が悪いだけ、みんなやってるさ、みたいな感じで、罪悪感のかけらもない。意識低い系?
税務署などの職員を装ってライバル企業に電話して情報を聞き出すなんて手口もあって、それサギでしょ。そんなこと平気でやってたひとたちがいま老人になって、税務署職員を装う還付金サギの被害に遭ったりしてるのを見ると、因果はめぐるってことなのだなあと思わず合掌してしまいます。
むかしは不正が発覚しても、企業のトップが記者会見でアタマ下げたりなんてことはしてません。それどころか社長が週刊誌の取材にこたえ、わけのわからんヘリクツで煙に巻いてイバってます。ライバル企業の機密を盗んでも悪びれることがないのだから、文書の改ざんなんて屁でもなかったはず。
誤解されては困るのですが、むかしからやってたからいまもやっていいのだ、なんていうつもりはありませんよ。真相はあきらかにすべきですが、組織で行われる不正というものは、伝統として継承されているものがほとんどです。そこをしっかり踏まえた上で真相解明に向かわないと、不正の根が残ったままで幕引きとなってしまいかねません。
[ 2018/03/21 16:27 ]
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