こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
今月もWeb春秋の連載、「
会社苦いかしょっぱいか」が更新されました。
今回のテーマは「知られざるビジネスマナーの歴史」。ビジネスマナーについては『反社会学講座』で取りあげてまして、10数年ぶりの再調査だったのですが、私の調査能力も、資料検索の環境も、格段に進歩してますので、以前とは比べものにならないほど深く広く掘りかえすことができました。
「ご苦労さま」と「お疲れさま」の使いかたが時代によってかなり変化してきたことは、一部の国語学者のあいだでは研究されてますけど、一般のかたはほとんどご存じないんじゃないですか。とくにお疲れさまに関しては、日本語の乱れといってもいいくらいの変化なのですが、なんとなく許容しちゃってますよね。
私も以前は気にもしなかったのですが、調べだしたら、たしかにほうぼうで「お疲れさまでした」といわれてることに気づきました。図書館を出る利用者に係の人が、お疲れさまでしたといってるんです。そのあいさつ、要る? べつに無言でもいいんじゃないかって思いますけどね。コミュニケーションをとらなければいけないという強迫観念かな。
ビジネスマナーの講師や本が、都市伝説や歴史捏造を広める元凶となっているのは本当に腹が立ちます。文化史をマジメに研究してる者からすると迷惑でしかないです。ウソ並べて文化を破壊してるオマエらがエラそうに他人のマナーを指導してんじゃねえよ、と説教したい。
本文ではサラッと流してますが、詳しく知りたいかたは以下の本を参照してください。
欧米では人前で化粧をするのは売春婦という伝説については、『日本人のための怒りかた講座』『怒る! 日本文化論』。
メラビアンの法則については、『反社会学講座』。
ヴィクトリア女王がマナー知らずの客に恥をかかせないために自分もフィンガーボウルの水を飲んだという伝説は、『みんなの道徳解体新書』で、それぞれ検証しています。
そして今回、なんと、連載最終回でございます。1年間ご愛読ありがとうございました。この連載は、書き下ろしを加えて単行本化されますので、お楽しみに。