私はこの記事を読み進むうちに、素面ではおれないような気分になって、近くの「ひろめ市場」で、まだ陽も高いうちからビールを飲んでしまった。

この連載は編集委員の掛水雅彦というベテラン記者が書いている。この人は文中で自身でも言っているように「野球の味方」だ。
しかし掛水記者は、少年野球の旧弊さに危機感を抱いていた。高知新聞は16年前に「たたく、ののしる」というタイトルで前時代的な少年野球の指導に警鐘を鳴らしていた。だが当時は、野球に比肩しうるスポーツはなかった。指導者は「嫌ならやめればいい」とうそぶくこともできたのだ。
しかし、サッカーが急速に普及し、野球はあっという間に足元をすくわれたのだ。

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サッカーが野球から競技人口を奪う過程を、もう少し具体的に見ていこう。
野球は投げる、取る、打つなどの基本的な動作ができるようにならないと試合にはならない。少年野球は、低学年は相手にしない。少なくとも3〜4年生になってはじめてチームに入って練習をすることができる。
しかしサッカーはボールを蹴るというシンプルなスポーツであり、小学低学年、さらには幼稚園児でも始めることが可能だ。事実、サッカークラブは幼児まで入部させている。
「青田刈り」というがサッカーは新芽どころか双葉のうちから子供を囲い込むのだ。

また最近は例外も散見されるようになったが、野球は女子を相手にしない。原則として男子だけのスポーツだ。
サッカーも少し前までそうだったが「なでしこジャパン」の活躍以来、急速に男女共有のスポーツになりつつある。
今、人気の映画「海街ダイアリー」でも4姉妹の末娘はサッカー選手として男子に伍して部活に励んでいるが、サッカーは男女隔てなくプレーできるスポーツになった。女親の好感度が高まるのは当然だ。

また親の負担にも大きな差がある。野球では休みの日に母親が湯茶の当番に駆り出されたり、父親が車を提供したり、審判をさせられたりすることがしゅっちゅうある。
サッカーではこうした負担が少ないのだという。月謝も用具代などの費用もサッカーの方が安い。

よほどの野球狂でない限り、これではサッカーになびくのも無理はないと思えてしまう。
もともと野球はルールが複雑で、女性には馴染みがない人が多い。その上に、昔ながらのスパルタは、女性には非常に野卑で、時代遅れのように感じられるのだという。

かくして、毎夜グラブを抱いて寝たような野球狂の愛児が、短いパンツを穿いて大きなボールを追いかけるようになっていくのだ。


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