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和歌山には星空に魅せられた人が古くからいる。天文教育家の高城武夫さん(1909~82)はその一人だ。大阪市立電気科学館退職後、私財を投じて和歌山市内の自宅敷地内に「和歌山天文館」を59年につくった。常設館としては国内で5番目に古いプラネタリウム施設だ。自ら設計した直径8メートルのドームの中に約100席を用意した。
和歌山天文館は高城さんの死去に伴い閉館。延べ15万人が来館した。81年に開館した和歌山市立こども科学館では、高城さんの偉業をたたえ、2004年末から半年近く特別展を開いた。星空の美しい世界を楽しんだ思い出を多くの市民に刻んだ当時の投影機は、今も展示されている。
高城さんは星空を眺めることの素晴らしさを多くの人に伝えようと情熱を注いだ。天文の教科書「天文教具」を73年に出版。天文現象が起こる原理や、宇宙の構造を学ぶために使う道具について執筆した。和歌山大学の尾久土正己教授は「天文教育に対する熱意は素晴らしい」と評価する。
和歌山大は星空を使った街おこしにも積極的だ。和歌山大の学生が店長になって中秋の名月を楽しむ「お月見カフェ」イベントを昨年9月15日(旧暦8月15日)に開催した。和歌山市の商業地「ぶらくり丁」の周辺10カ所近くが会場だ。天体望遠鏡を使ったビル屋上での観望会には約20人が来場した。このほか、月をテーマにした音楽会など内容は多彩だ。
小さなイベントをあちこちで繰り広げ、大人を満足させる。日本人が千年以上続けてきた習慣「お月見」がキーワードならば老若男女を呼べ、街おこしになるとの発想だ。地域を挙げたイベントを「10年続けていたら知らぬ間に『お月見といえば和歌山のお月見カフェ』ということになれば」と尾久土教授は話す。