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BS1 ワールドウオッチング - WORLD WATCHING -

特集

2018年1月25日(木)

インドが中国「一帯一路」に対抗 「アクト・イースト」政策

 
放送した内容をご覧いただけます

中国が推し進める経済圏構想「一帯一路」。
これに対してインドのモディ首相が力を入れているのが、「アクト・イースト」政策。

インド モディ首相
「『アクト・イースト』政策でASEAN諸国とのつながりを強化する。」

東南アジア諸国とのつながりを強化して、巻き返しを図るねらいです。
一方、軍の幹部は中国海軍に対する警戒心をあらわに。

インド海軍准将
「中国は南シナ海と同じような戦略をインド洋で展開する可能性がある。」

近隣諸国に姿を見せた潜水艦など、中国の海洋進出の動きを懸念しています。
インドは軍事的な存在を増す中国とどう向き合うのか。
その戦略を探ります。

インド「アクト・イースト」で中国戦略に対抗

花澤
「インドのモディ政権が、経済と安全保障の両面で中国に対抗する姿勢をあらわにしています。」

増井
「本格的に動き出した東南アジアとの関係を強化する『アクト・イースト』が、その戦略です。」

松岡
「インドは中国に次いで、人口が13億を超える大国です。
ところが、急速に経済成長するインドは、中国への警戒感を強めています。
中国は巨大な経済圏構想『一帯一路』の実現に向けて、中東へのシーレーンの要衝となる国々で、インドを取り囲むように、港などインフラを次々と整備。
こうした港には、タンカーや貨物船だけでなく、中国海軍の艦船も寄港させています。
反発するインドのモディ首相は去年(2017年)、北京で開かれた『一帯一路』のフォーラムをボイコットしました。

そのモディ首相が進めるのが、『アクト・イースト』。
東南アジア各国との政治的・経済的なつながりを強化しようという戦略です。
また、インドを中心に、東南アジアからヨーロッパやアフリカを結ぶ巨大な経済圏構想も計画されていて、中国の『一帯一路』構想と似ています。

こうした中、インドとASEAN10か国の首脳会議が、今日(25日)、ニューデリーで始まりました。」

インド「アクト・イースト」で中国戦略に対抗

ASEANの首脳たちを笑顔で出迎えたモディ首相。

インド モディ首相
「インドにおいて、戦略的パートナーシップの重要性が増しています。」

首脳会議では、インド洋から太平洋にかけての海上の安全保障や経済関係の強化について議論を交わしているとみられます。
首脳会議に先立ち、ASEAN各国の投資家やビジネスマンらを招いて交流を図りました。

インド シン外交担当相
「インドとASEAN諸国は、陸上・空路・航路など各分野での物理的なつながりを強化し、その関係を着実に発展させます。」

物流から観光に至るまで、経済的な連携を強めるねらいです。

ミャンマーのビジネスマン
「インドの経済成長は著しいので、ぜひその恩恵を受けたいです。」

インドのビジネスマン
「インドにはとても魅力的な構想があるので、近隣諸国との貿易緩和を進めるべきです。」



リポート:太勇次郎支局長(ニューデリー支局)

一方、インドは軍事面で中国への警戒を強めています。
「一帯一路」の要衝、隣国・スリランカのコロンボです。

中国企業が日本円で1,600億円を投資し、巨大な港湾都市の建設を進めています。
港では数年前から、中国の潜水艦が目撃されるようになりました。

中国は、スリランカやパキスタンに巨額の経済支援をする一方、潜水艦を相次いで寄港させています。
インド政府は、中国が港の軍事利用を既成事実化しようとしているとみています。

こうした動きに対して、インド軍は不信感をあらわにしています。
中国とどう向き合うのか。
先月(12月)開かれたフォーラムには、軍の幹部や外交官など100人余りが参加し、議論しました。

インド海軍 ライ准将
「中国は海賊対策を口実にインド洋に来たが、目的は潜水艦の配備なのか、海賊対策なのか。
通常はどの国も海賊対策には潜水艦ではなく船を使う。
中国は南シナ海と同じような戦略をインド洋で展開する可能性がある。」

インド政府の諮問委員会に参加する専門家は、中国は世界を主導する立場を目指していて、インド洋での動きはその一環だと分析しています。

インド政府諮問委員 チョプラ氏
「地球上の70%は海だ、世界を制するには海軍が必要だ。
もし強大な力が欲しければ、海洋における存在感が重要だ。
中国が短期間で海軍を作り上げたことは、誰も否定のしようがない。」

これに対してモディ首相は、海軍力を大幅に強化する方針です。
先月にはモディ首相も立ち会って、国内で初めて建造された潜水艦がお披露目されました。

インド モディ首相
「インドに対する圧力が、以前とは変わってきている。
その変化に対応する防衛力を最大限に準備していく。」

潜水艦の最大の任務は、中国の艦船に対する警戒の強化です。
さらにインド政府は、内陸の山岳地帯でも中国軍の動きを警戒しています。
去年6月、中国とブータンの係争地で中国が道路建設を進め、インド軍は隣接するシッキム州に部隊を展開。
中国とインドの両軍は2か月にわたってにらみ合いました。

国境地帯をどうやって守るのか。
インドの軍需産業は、山岳での戦闘を想定した武器や装備品の開発を急いでいます。

インド軍 ラワト参謀長
「中国からの脅威に対応しなければならない。
これまでは西(パキスタン)を警戒していたが、北(中国)の国境にシフトする時がきた。
準備を急がなければならない。」

安全保障を担当した元首相顧問は、中国への警戒を怠ってはならないとしています。

メノン前国家安全保障顧問
「中国は通常の国の概念に当てはまらない。
今後の政策を、過去の政策からは予測できない。」


経済も軍事も

増井
「取材した、ニューデリー支局の太支局長に聞きます。
インドは中国に対して、経済でも軍事でも対抗していこうということなのでしょうか?」


太勇次郎支局長(ニューデリー支局)
「今のところ、インドは中国に対する警戒を強め対立はするものの、衝突は避けようと努めています。
中国はインドの主要な貿易相手国で、これまでインド政府の関係者が表立って中国を批判することはほとんどありませんでした。
しかし、最近のインド洋での中国海軍の動きや、去年の国境地帯での軍事的緊張、さらには『一帯一路』を口実にインド包囲網を構築するような動きに反発して、中国を警戒し、非難する発言が頻繁に聞かれるようになりました。
特に、国境地帯で両軍がにらみ合った時には、衝突の一歩手前だったとインド政府の関係者は話していました。
このため、インドの安全保障担当のドバル首相補佐官は、先月、ニューデリーで、中国の外交を統括する楊潔チ国務委員と戦略対話を行い、緊張の緩和と偶発的な衝突の回避について話し合いました。
その一方で、インドは今後の不測の事態に備えて、中国を意識した軍事力の強化を急いでいます。」

警戒の背景は?

花澤
「それにしてもインドの姿勢は大きく転換しましたよね。
ここまでの転換、その背景には何があるのでしょうか?」

太支局長
「インドが、アメリカの影響力の低下を心配するようになったからです。
リポートで紹介したフォーラムでも、このままでは中国がアメリカに取って代わる可能性があると指摘する声が出ていました。
インドは今、外交で金科玉条としていた『非同盟・自主自立』の政策を事実上転換し、対中国を念頭に『国際協調路線』、価値観を共有する国と同盟関係に近い関係強化を進めています。
『アクト・イースト』戦略で東南アジアや周辺国とのつながりを強化しているのも、その一環です。
もちろん、東南アジアや周辺国の中には中国寄りの国もあります。
ただ、つながりを作っておくことで、こうした国々が中国から圧力をかけられたり、主権を侵害されたりした場合に、中国とは異なるもう1つの選択肢として、インドに乗り換えてくれるよう準備をしているのです。
さらに、日本やアメリカ、それにオーストラリアとの間でも、航行の自由や法の支配を基礎とする『自由で開かれたインド太平洋戦略』の実現に向けて、連携を強化しようとしています。
アメリカのトランプ政権の下で、アメリカの影響力が低下したらインドはどのような役割を果たすべきか、今、インド自身が真剣に考えています。」

増井
「『アクト・イースト』、ますますインドは中国に対抗していく姿勢を強めているんですね。」

花澤
「中国とインドというのは戦略的には長い間、対立関係にあったんですが、インドはその間も、中国と良好な関係は維持するという方針でやってきたんです。
その姿勢がここに来て急激に、大きく変わったなと感じます。
日本、オーストラリア、そしてインド。
中国が自信を深める中、各国が警戒を強めていく流れは、今後はさらに加速していきそうです。」

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