まず、「どんな機能が加わるか」知ることが大切
したがって、「WaaS」において中堅・中小企業がまず知っておくべきなのは年2回の頻度で提供される「機能更新プログラム」でどのような機能が追加されるのか?という点だ。
「Windows 10にはバージョンという概念がなくなる」と述べたが、それぞれの「機能更新プログラム」は互いに区別しやすいように名称が付けられている。毎回の「機能更新プログラム」の名称と追加される機能は事前に公表されるので、それを元に自社に必要な機能かどうか?を判断することができる。
たとえば、2017年10月と2018年4月に提供された「機能更新プログラム」の名称と代表的な追加機能を記載すると以下のようになる。
2017年10月:「Fall Creators Update(1709)」 「Windows Mixed Reality」 ヘッドセットと組み合わせて仮想現実(VR)や複合現実(MR)の基盤を構成できる
「Microsoft Launcher」 スマートフォンで行っていたWebやファイルの閲覧をPC上で手軽に引き継げる
2018年4月:「April 2018 Update(1803)」 「タイムライン」 過去の作業状態を時系列に沿って選択し、別の端末上にも復元できる
「集中モード」 時間帯や相手に応じて、SNSなどからの不要な通知や音を遮断できる
たとえば、2017年10月の追加機能はVR/MRといった先進的な用途や社外でのスマートフォン活用に積極的に取り組むユーザー企業にとっては魅力的な機能となってくるはずだ。
一方で、2018年4月の追加機能はオフィス内におけるPC作業の効率改善を重視した内容となっている。
このように、各回の「機能更新プログラム」にはそれぞれの特色や方向性がある。それらを事前に確認し、「配信が開始されたらすぐに適用するのか?」または「今回の配信は1回分をスキップして、次回の機能更新プログラムまでの間に懸念される影響はないかを確認する時間を確保するのか?」などを判断していくことになるわけだ。
すべてはユーザー企業側の捉え方次第
「WaaS」の考え方は長い間「モノ+サポート」が当たり前だった企業向けIT活用の視点で見ると、違和感を抱く方も多いかもしれない。だが、個人が所有するスマートフォンでは「OSやアプリケーションがネットワーク経由の更新によって機能アップしていく」ことが逆に当たり前となっている。
デジタル化により、ビジネス環境の変化は徐々に激しくなってきている。中堅・中小企業がそうした環境を生き抜くためには、「モノ+サポート」から「サービス」へと発想を転換し、変化に素早く対応できるIT基盤を構築することが大切だ。「WaaS」を「不要な機能を無理強いされるもの」と捉えてしまうと、単なる負担だけになってしまう。だが、「最新のIT活用で求められている機能を知り、その中から自社が必要とされるものを選ぶ機会」と捉えると、今後のIT活用を学ぶ良い機会にもできるはずだ。
筆者としても、多くの中堅・中小企業にとって「WaaS」がプラスの変化となることを祈念している。本稿がその一助となれば幸いである。