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【政治】

強制不妊 救済法案一本化 与野党、謝罪主体は「国」避ける

 旧優生保護法(一九四八~九六年)下での障害者らへの強制不妊手術問題で、自民、公明両党の合同ワーキングチーム(WT)と野党を含む超党派議員連盟が十日、それぞれ会合を開き、救済法案を一本化し、基本方針をまとめた。「(被害者が)心身に多大な苦痛を受けたことに対し、われわれは真摯(しんし)に反省し、心から深くおわびする」として、一時金を支給する。

 与野党は来年四月ごろ、通常国会に議員立法で法案を提出し、早期成立する見通し。「障害者差別に当たる」として旧法から「優生手術」の条文が削除されてから二十二年。非人道的な政策に対する救済がようやく実現する。一時金の額は与野党で協議し、法案提出までに決める。

 「反省とおわび」は法案の前文に盛り込む。主体を被害者側が求めていた「国」ではなく「われわれ」としたことについて、与党WT、超党派議連は「議員立法で旧法を制定した国会や、旧法下で手術を進めた政府も含む」と説明。旧法の違憲性には触れなかった。

 一時金の対象は手術を受けた本人で、配偶者らは対象外。形式的に手術に「同意」した例も含む。手術の公的記録が見つからない人も除外せず、専門家で構成する審査会を厚生労働省に設け、医師の所見などを基に手術を受けたかどうかを判断、厚労相が被害認定する。また子宮摘出など旧法で規定していない手術も救済対象とする。

 被害認定の請求は法の施行日から五年以内とし、速やかな救済につなげるため、都道府県に相談窓口を設置。手術記録の確認や救済策の周知、広報などでも国との連携を促す。旧法制定の経緯や被害の実態を国会で調査することも検討する。

 旧法下で手術を施されたのは約二万五千人。各地で国を相手に損害賠償を求める訴訟が起き、一月に仙台地裁に提訴された全国初の訴訟は、原告側によると来春にも判決が出る見通し。与野党は年明けに法案の細部を詰め、司法の判断を待たずに成立を目指す。

◆被害者憤り「国が謝罪を」 訴訟継続の意向も

 「命ある限り国と闘う」「首相が直接謝罪を」。被害者を救うための法制定へ大きな一歩のはずが、国の責任は明記されず、当事者からは逆に憤りや不安の声が。国家賠償請求訴訟を続行する意向も示された。

 十日午後の参院議員会館。自民、公明両党の合同ワーキングチーム(WT)に続き、野党を含む超党派議員連盟の会合が開かれた。不妊手術を強いられたとして東京地裁に国賠訴訟を起こした原告の男性(75)も傍聴。今月設立された「優生手術被害者・家族の会」の共同代表でもある。

 小柄な体を丸め、厳しい表情のまま配布された法案の基本方針に「死んでも死にきれません」と自身の思いを記した。特に納得できないのは反省とおわびの主語が「われわれ」とされた点。「誰が『われわれ』なのか。国の人たちが謝罪するまで、命ある限り闘っていく」と、国賠訴訟を続ける考えを表明した。

 最も早く提訴した仙台訴訟原告の六十代女性の義姉は、違憲性に触れなかった点に「認めてほしい。そのためにも裁判は闘い抜く」と決意を新たに。対象者を手術記録の有無だけで認定しないことは評価した一方、申請漏れを防ぐため被害者に個別通知する制度を要望した。

 札幌訴訟原告の小島喜久夫さん(77)も「われわれ」に反対の立場。救済は遅すぎたと感じるものの、このまま法案作成が進むことに不安も抱く。「急ぐのも大事だが、私たち当事者ときちんと話し合う場をもっと設けてほしい」。神戸訴訟の原告で聴覚障害がある小林喜美子さん(86)と夫宝二さん(86)は手話で取材に応じた。喜美子さんは「首相が直接謝りに来ないと納得できない」。宝二さんは「子どもがいないことで高齢になるほど将来の不安が増している」と被害者の現状を知る努力を求めた。

 全国被害弁護団の一人は、対象者を法施行時点の生存者としている点に強く反発。「既に亡くなった多くの当事者はどうなるのか」と述べた。

 

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