教員の残業減は地域と協働で

社説
2018/12/11付
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長時間勤務が常態化している教員の働き方を抜本的に見直す指針案がまとまった。授業の充実という本来の職務に専念できる職場環境を、地域や家庭の理解と協力を得ながら整えてほしい。

文部科学省の案は、時間外勤務の上限を「月45時間、年間360時間」に定めた。公立小中学校の教員の残業は、1日平均3時間を超す。ハードルは極めて高い。

学期末や年度末の繁忙期と、児童・生徒が夏休みの8月などの時期により、1日の勤務時間の上限を調整する1年単位の「変形労働時間制」の導入も提案した。

留意が必要なのは、同制度は教員の残業をできる限り「月45時間」に近づける最大限の努力をした後に、自治体の判断で実施する選択肢の一つ、という点だ。残業減が進まない段階で実施すれば、かえって長時間労働を助長する手段になってしまう。本末転倒だ。

どうしたら教員の在校時間を圧縮できるのか。小学校では、朝の出勤時間の適正化も課題だ。共働き世帯の増加で、親の出勤時間にあわせて子供を始業時刻より早く登校させる保護者も多い。これに対応するため、教員は定時より平均45分早く出勤する。適正化で年150時間の圧縮が可能だ。

中学校では、部活時間の短縮や地域の人材の活用で、年280時間短縮できると試算する。いずれも、家庭や地域に十分説明し、協力を得る必要がある。

肝心なのは、業務の仕分けで教員が授業の準備に十分な時間を確保し、教育の質を向上させる成果を出すことだ。新学習指導要領では英語の早期教育やプログラミング教育が始まる。意欲と能力のある若者を教育現場に呼び込むためにも働き方改革は欠かせない。

公立学校の教員の残業の割増賃金は労働基準法の対象外だ。一方で、特例法により、給与額の4%を実質的な超勤報酬として一律に支給する。この枠組みは残すという。4%の水準が妥当かどうかは、残業減の進捗状況などを検証し改めて検討すべき課題だ。

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