【スポーツ】[フィギュア]紀平、ザギトワ倒した 北京の星 真央以来のシニアデビュー年V2018年12月10日 紙面から
◇グランプリ(GP)ファイナル▽最終日▽8日▽バンクーバー(カナダ)▽ダグ・ミッチェル・サンダーバード・スポーツセンター▽女子フリーほか▽ペン・辛仁夏 憧れの真央ちゃんにまた一歩近づいた。女子はショートプログラム(SP)首位の紀平梨花(16)=関大KFSC=がフリーも1位となる150・61点をマークし、自己ベストの合計233・12点で初出場優勝を果たした。日本勢でGPデビューシーズンでの制覇は2005年の浅田真央以来の快挙。日本女子の優勝も13年の浅田以来5季ぶり3人目(6度目)となった。 優勝を告げる得点が表示された瞬間、ニューヒロインは両手で頬を押さえて喜びに浸っていた。紀平が勝った。あの五輪女王を打ち破った。あの“ロシア帝国”に風穴を開けた。最終滑走の重圧もはねのけた16歳が、日本勢では13季ぶりとなる偉業をやってのけた。「悔いのない演技ができたので、演技が終わって、うれしさが一番初めに出てきた」 とてもシニア1年目とは思えないハートを見せつけた。激しい雷鳴から始まるフリー曲「ビューティフル・ストーム」の冒頭、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を挑んだが、回転が足りず、前かがみに両手をついた。普通なら慌てる。だが、続くジャンプで再び3回転半に挑んで成功し、2回転トーループの連続ジャンプにした。 「あなたはトリプルアクセルだけじゃない。いい4分間を見せて」。浜田美栄コーチから、こう送り出されたそうだ。終わってみれば失敗したのは冒頭のジャンプだけ。後半の3回転ルッツからの連続ジャンプではきっちりと3回転トーループを跳んで成功した。「NHK杯ですごくいい点数を出せたので、完璧なノーミス演技をすれば、表彰台に乗れると思っていた」。自分を信じてNHK杯のフリー(154・72点)に迫る150・61点をたたき出した。 「ついにって感じです」と話したのは浜田コーチだ。宮原知子(関大)や白岩優奈(関大KFSC)も教え子の同コーチにとって、いや日本女子全体にとって、ロシア勢は大きすぎる壁だった。平昌五輪ではワンツーで今大会も前年までロシア勢が4連覇中。そんな強大な“ロシア帝国”のトップに君臨するのがザギトワだった。しかも今回はロシア勢が得意とする表現力を示す演技点でもザギトワの72・70点と遜色のない72・40点。紀平は単なるジャンパーじゃない。指導してきた方法に間違いはなかった。 「北京五輪で優勝という夢があるので、これからも安定した成績を残せるようにやりたい」。演技前、必ず行う縄跳びがないと焦っていた少女は今では忘れると“エア縄跳び”をすると言う。心も体も成長してきた16歳の夢は大きく近づいている。
|