【サッカー】天皇杯は浦和 宇賀神、スーパーボレーが千金弾2018年12月10日 紙面から
◇天皇杯<決勝戦> 浦和1-0仙台サッカー日本一を決める第98回天皇杯全日本選手権最終日は9日、埼玉スタジアムで決勝が行われ、浦和が仙台を1-0で下し、12大会ぶり7度目の優勝を決めた。賞金1億5000万円を手にし、昨年制覇したACLの出場権も獲得した。浦和は前半13分に宇賀神が右足でボレーシュートを決めた。初タイトルを狙った仙台は好機を生かせず東北勢初の優勝を逃した。元日決勝が恒例の天皇杯だが、今大会は来年1月5日に開幕するアジア・カップなど他の大会との兼ね合いで前倒しとなった。次回大会は2020年元日に新国立競技場で決勝が行われる。 オリベイラ監督の体が5度、宙に舞った。柏木が、槙野が、平川が天皇杯を埼玉の夜空に掲げた。「We are REDS」の凱歌(がいか)が響き渡る。「苦しい時もあったけど、無駄じゃなかった。本当に最高」。今季から主将を託された柏木は感無量の表情だった。 いつもは日陰の男がこよいのヒーローだった。前半13分。柏木のショートCKから長沢が右クロスを送ると、相手DFにクリアされた。そこに、宇賀神が待ち構えていた。ゴールまで約20メートルの距離。球の落ち際を右足で迷わずズドン。鋭いドライブ回転を描いた弾丸は、身長197センチの仙台GKシュミットの頭上を越えて急降下した。豪快にネットが揺れ、埼スタは沸騰した。 スーパーボレーはまぐれでも、偶然でもない。実は、前日8日の練習場で繰り返したシーンだった。「練習では(ゴール上に)ふかしてしまったので、終わってからも練習しました。勝負強さは見せられたかな」と宇賀神。16年ルヴァン杯、17年ACLに続く3季連続の戴冠へと導く、衝撃のV弾だった。 今季は開幕5戦で2分3敗と低迷した。堀監督が成績不振で解任され、暫定的に指揮した大槻監督を挟み、オリベイラ監督で指揮官は3人目。ただ、どん底でもがきながら、チームは破綻はしなかった。 槙野は言う。「チームを支える30歳代はぶれなかった。監督が替わっても大きく崩れなかった」。陰日なたとなって下支えしたのは「熱の結束」を誇る柏木、槙野、西川、武藤、興梠、宇賀神の30歳代の主軸6人はいつも厳しく求め、支え合った。 仙台戦の後半17分、ベンチに下がった柏木は興梠を呼び寄せ「いま、まとまる時間だぞ」と声をかけた。強固な下地は崩れない。だから、ブラジル人指揮官が持ち込んだ規律、勝負強さによって、浦和は蘇生した。そこに、価値がある。 来季は再びACLの舞台に挑戦する。「もう一度、アジア王者に返り咲くために」-。合言葉を実現する権利を、浦和が力ずくで手に入れた。 (松岡祐司)
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