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 いやぁ、随分笑わせてもらった。何の話かというと、最近、政財界で組織のトップとパソコン利用について耳目を集めた例の騒動である。騒動の舞台はもちろん日本経済団体連合会(経団連)と国会だ。経団連会長とサイバーセキュリティー担当大臣が「パソコンを使えない」との疑惑や事実が騒ぎの発端だった。この騒動は本当に笑えた。言っておくが、経団連会長や大臣が笑いの対象ではないぞ。騒いでいる人たちを笑ったのだ。あんたら、一体いつの時代の人やねん!

 2つの騒動について復習しておくと、最初の騒動の舞台は2018年10月下旬の経団連だ。火付け役となったのは「日立製作所出身の中西宏明会長が会長室に初めてパソコンを設置し、職員にメールを出した」との新聞報道。記事が出るや、Twitterなどのソーシャルメディアでは「経団連の歴代会長はパソコンを使っていなかったのか」との驚きの声が上がり、「IT後進国ニッポンの象徴」などといった皮肉や嘆きで満ちあふれた。

 もう一つの騒動は3週間後の11月中旬、サイバーセキュリティーも担当する桜田義孝五輪相が国会で「パソコンを使ったことがない」と発言したことが発端。「パソコンに触れたこともない人がサイバーセキュリティー対策を担当するのか」と物議をかもした。この2つの騒動に共通する前提は「企業や国を問わず組織のトップたる者、パソコンぐらい使えないといけない」という考え方だ。

 確かに今やデジタルの時代なのだから、この前提は当然のように思える。ましてサイバーセキュリティーの担当大臣ともなるとなおさらだ……。だが、本当にそうか。もちろん経団連の歴代会長が本当にパソコンを使っていなかったのかは、今となっては分からない。一方、「パソコンを使ったことがない」と言明した大臣には、ITやセキュリティーを死ぬほど勉強してもらわないと困る。ただ、パソコンが使えるか否かの一点にトップが持つべき情報リテラシーとは何かという問題が矮小(わいしょう)化されるのは、明らかにおかしい。

 「おかしい」と言っても、この件は笑うようなおかしさではない。私が笑ってしまったのは、Twitterなどであざ笑っている人たちが「パソコンを使って当たり前」と思い込んでいる点だ。おいおい、いつの時代の話だ。政治家は知らんが、今どきの経営者はパソコンなんか使わないぞ。若い頃、年配の人たちが「今どきの子供は鉛筆をナイフで削れない」と嘆くのを聞いて「化石か、この人たち」と思った記憶がある。それを思い出して大笑いしてしまったのだ。