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顧客との「情緒的な繋がり」を築くために、企業が磨くべき4つの「人間性」とは

2017年10月31日



【POINT】

  • 企業と顧客のあらゆるタッチポイントでは、必ず人間の感情が動いている
  • 企業のブランドに明確なパーソナリティが込められていると、「自分が望むものを提供してくれる存在」として信用され、選ばれる可能性が高い
  • 消費者の注目を得るひとつの方法は、お決まりのパターンや慣習を破り、ありふれた言い方をしないことだ


デジタルの進化によって企業と顧客のタッチポイントが増えているが、あらゆるタッチポイントには必ず人間の感情が働いている。

人間の「情緒」とは、「思い」「感情」「欲求」とはなにか。ひとつだけ確かなことは、数字でもプログラミングコードでも、電気信号でもないということだ。

仮に、コンピューターが別のコンピューターにモノを売ろうとするなら、数えたり、処理したり、査定したりなど、ソフトウェアが簡単に実行できる行為にもとづいてマーケティングを行う、ということが成り立つかもしれない。しかし、人間が人間にものを売るためにコンピューターを使う場合、「マーケティング戦略ではテクノロジーがすべて」と思い込むのは早計に過ぎる。

つまり、言いたいことは至ってシンプルだ。「人間とコミュニケーションをとる上で、人間ではないものに頼り過ぎてはいけない」ということである。

チャネルの増加や優れたアプリの考案といった、飽くなきイノベーションの追求は、企業が顧客とつながる様々な機会を生み出した。しかし、デジタルで可能なことが増えたとしても、根幹では「マーケティングを行う人間」と「マーケティングされる人間」の脳の働きが相互作用している、ということを忘れてはならない。テクノロジーは、人とのつながりを仲介することはできても、その質を保証することはできないのだ。質を保証できるものはたったひとつ。地上でもっとも感度の高い情報処理システム、つまり、人間の脳である。

コミュニケーションは人間が充実感をもって生きるためのツール

コミュニケーションは人間が充実感をもって生きるためのツール


人間とは、本質的に社会的な生き物であり、生まれつき他者との間に有益な結びつきを探し求めている。この特質は、人間の行動と意思決定を支配する、非常に高い感応力を備えている。つまり人間は、他者から共有される文化、価値、欲求を示すシグナルを、絶えず積極的に感知しているのだ。

他者との相互理解は人間の生存と成功に不可欠であり、我々は常に「理解したい」「理解されたい」と願っている。コミュニケーションは人間が充実感をもって生きるためのツールなのである。

最近の研究によると、人間の声音で人間の特徴を模倣するマーケティング活動は、実際の人間同士のコミュニケーション時に反応する脳の部位と同じところを活性化させるという。この発見は、消費者の信用と愛着を促す「感情的な反応」を引き出せるメカニズムがあることを示唆している。機械に任せる部分が大きいマーケティング活動では達成が難しい「より深い関係性」の実現に役立つ、新たな機会が拓けているといっていいだろう。

この点をよく理解し、機微に聡く、情緒的なアプローチを優先したキャンペーンを行うマーケターは、真の意味での消費者との結びつきを実現し、結果を出していくだろう。

混乱の時代における、人と人との「真のつながり」とは

「フェイク(偽)ニュース」に「フェイクプロファイル」、あるいはブランドのメッセージまでフェイクが横行する混沌とした世の中において、真のつながりとは、いったいどんなものなのか?「人間」をキーワードに考えてみよう。人対人のつながりは、かけがえのない4つの性質を備えている。消費者との情緒的な繋がりを強くするために、企業は以下に示す4つの「人間性」を伸ばしていくべきだろう。

企業が持つべき「人間性」(1):「共感力

企業が持つべき「人間性」(1):「共感力」


企業は、顧客と互いに信頼しあう社会的な存在として、顧客に対する共感力を磨いていく必要がある。最近の研究によると、人間は進化の過程において、自らを理解しニーズを満たしてくれそうな、価値を共有できる存在に執着してきたという点が注目されている。

ビッグデータ解析により、これまでになく高度なパーソナライズとターゲティングをマーケティングに適用できるようになった。消費者のニーズや要望をデータとして照らし出す技術を手にした現代の我々は、非常に恵まれているといっていいだろう。英国の住宅金融 ネーションワイドの「Voices Nationwide」キャンペーン (※1)、知育玩具LEGOの「Kronkiwongi」キャンペーン (※2)は、文化的/個人的な価値観の中心に感受性を据えているが、テクノロジーはこうしたキャンペーンの発見や共有に貢献している。

しかし、テクノロジーの力を借りたキャンペーンは、時には大量のゴミとして認識されてしまうこともある。2017年はじめ、複数の超大手企業が、YouTubeとGoogleの両方で、自社の広告が過激派コンテンツの横に表示されていることを発見した。データは賢く人間的に活用しなければ、役に立たないどころか、逆効果になってしまうのだ。

(※1)ネーションワイドの事例:同社によって家を持つことができた顧客たちが、それぞれの経緯と喜びを語る動画を多数作成し、Youtubeに展開した。
(※2)LEGOの事例:「Kronkiwongi」は、どの国の言葉にもない造語。「Kronkiwongi」から連想するものを自由に作ろうと呼びかけることで、想像力や発想力を育むというLEGOが持つ特性の認知を広めた。

企業が持つべき「人間性」(2):「自信」

企業が持つべき「人間性」(2):「自信」


企業のあるべき姿として、世の中の変化の速さに遅れをとらず、しっかりと自社の立ち位置を保つことも大切だ。科学的な研究、また最近の政治状況を見ても、変化の激しい世界では、自分の立ち位置や考えに自信を持っている人物が、大衆に信用される傾向にある。自信は有能さと同義に取られることが多く、誰の目にも明確な力強いパーソナリティを持つブランドは、消費者から「自分が望むものを提供してくれる存在」として信用され、選ばれる可能性が高い。

自信に満ちたブランド姿勢を明確に伝えた良い事例として、スニーカーブランド「Keds(ケッズ)」のキャンペーンが挙げられる。このキャンペーンでは、国際女性デーに参画する女性起業家たちとコラボし、彼女らがそれぞれの方法でスニーカーをカスタマイズしていく様子を映しながら、「強さを備えた女性らしさ」という明確なアイデンティティを伝えるプロモーションを行っている。

企業が持つべき「人間性」(3):「反応力」

企業が持つべき「人間性」(3):「反応力」


反応力のある企業は、迅速でポジティブなアクションを取ることができる。双方向コミュニケーションは、顧客とのつながりを強固にし、信頼を築く上で基本となるものだ。ブランドの考えを顧客に押し付けるのではなく、ブランドに何を望むかを顧客に語らせる企業が、成功を収めている。最も効果が高いブランドコミュニケーションは、「傾聴し、反応し、提供する」という人間的なパターンに従っている。

成功しているグローバルブランドを見てみよう。例えばAirbnbなどのブランドは、テクノロジーそのものにこだわるのではなく、サービスを使ってくれる人間を中心にマーケティング戦略を考えている。Airbnbは、サービス独自のオンラインコミュニティを持ち、ユーザーの声に応えることで、「世界中どこにでも居場所がある」ことを示し、その体現者であるユーザーの声を活用してきた。

テクノロジーを駆使した消費者向けの「コネクテッドコンテンツ」は、Airbnbのようなビジネスモデルのマーケティングにうってつけのメカニズムを備えている。複数のチャネルやタッチポイントで一貫性を保ちながら、パーソナライズした対応が可能になるからだ。デジタルとリアルの境界は今後、より曖昧になっていくと予想され、それぞれの場における対応について同期を図る必要がある。こうした流れは消費者にとっては味方になり、ブランドへの愛着を高める機会として捉えることができる。

企業が持つべき「人間性」(4):「意外性」

企業が持つべき「人間性」(4):「意外性」


人間の注意力が長続きしないのは、今に始まったことではない。我々人間の脳の働きは、理解したような気になったら、すぐに別のことに気を取られてしまうものだ。消費者の注目を得るひとつの方法は、お決まりのパターンや慣習を破り、ありふれた言い方をしないことだ。人間は面白いこと、目新しいことを好むが、面白さや目新しさといったものは、コンテンツを提供する方法ではなく、コンテンツそのものにあって然るべきだろう。

こうしたブランディングは、あらゆるキャンペーンに応用できる。例えば、ウィスキーブランド「ジャックダニエル」の「JD Rootsプラットフォーム」(※3)や、リキュールブランド「シャンボール」の「Because no reason」キャンペーン (※4)は、極めて独創的なコンテンツを展開している。両ブランドとも、人間が求める「意外性に満ちた面白さ」で顧客の心を掴んでいる。

(※3)ジャックダニエルの事例:地元の音楽シーンを盛り上げるキャンペーンを行い、最も優秀なライブハウスを決める投票や、ライブツアーを実施。ブランドと音楽の関係を印象づけた。

(※4)シャンボールの事例:一般消費者への商品認知を上げるために、若い女性をターゲットに据え、「理由はないけれど好き」というメッセージを打ち出したアート性の高い動画を作成した。

筆者の所属企業が手がけたリサーチ「Think Human(人間を考える)」は、クリエイティブなアイデアと消費者の選択行動に焦点を当て、アクションにつながるよう働きかけている。テクノロジーは、人間の感情を学習し、さらには模倣するところまで進化している。しかし、テクノロジーが人間の感情に完全に取って代わることは絶対にありえない。なぜなら、生物学的進化の必然として、テクノロジーは人間の脳のように「考える」ということをしないからだ。人間ファーストという考え方は、複雑なテクノロジーの世界では、単純なアイデアのように思えるかもしれない。しかし、それはまた最も基本的な考え方であり、顧客を見失うことなく、長期にわたる有意義な関係を築く上で極めて有効な手段となるはずだ。

 

CMO.com
英国のデジタル顧客体験制作会社 COMMUNICATOR マネージングディレクター
Richard Southonによる記事を翻訳


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