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2016年のよかったものども

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。この夏は、泡盛の「残波」を薄~いソーダ割りにして飲んでました。東京だと酒屋でもあまり見かけない残波が、なぜか近所のまいばすけっとで売ってるんです。

 2016年のよかったものどもを選出しました。

音楽編

Arkady Eskin『What's New』(ジャズアルバム・ピアノトリオ)
 今年のわけわからん大賞。東欧、ベラルーシという国のピアニスト。名前も、アーカディ・エスキンという英語風の発音で正しいのかすらわかりません。
 CDのジャケットも英語の曲名以外はすべてキリル文字で読解不能。現地では2005年くらいに発売されたものらしい。私は今年中古で入手しました。
 写真の印象では、50代か60代のおじさんです。ジャケットの下に着てるTシャツの文字が「deep purple」に見えるんですけど、ジャズを演奏するのになぜロックTシャツ?
 ジャズではウッドベースが普通ですが、このトリオのベースはエレキベース弾いてるのもロックっぽい。でも彼らがやってる音楽をジャンルわけするとフュージョンではなく、まちがいなく王道のジャズなんですよねえ。
 私のお気に入りは「ベサメムーチョ」。ラテンの名曲が、東欧のスパイスをたっぷりまぶされたアレンジで演奏されます。エフェクトかけまくりのクセが強いベースソロがフィーチャーされるのですが、途中からギターに持ち替えてない? もうなんでもありかよ。
 わけわからんといいつつ、何度も聴きたくなる妙な中毒性がある一枚。


JUJU『WHAT YOU WANT』(Jポップアルバム)
 近頃の日本のミュージシャンは、有名曲のカバーアルバムで稼がないとオリジナルアルバムを作らせてもらえないんですかね? カバー曲に興味が持てない私は、洋楽好きの30、40代がハマりそうな名曲揃いのこのオリジナルを推します。


映像編
『ファーゴ』(テレビドラマ・アメリカ)
 いまやアメリカは映画よりテレビドラマのほうがおもしろいというのが常識になりつつあります。これ、映画のリメイクだと思ってスルーしてる人が少なくないようですが、オリジナルストーリーです。有名俳優がほとんど出てないので、いつだれが死んでもおかしくない緊張感が最後まで持続します。有名俳優が出てると、どうせこの人、最後まで生き残るんでしょ、ってわかっちゃうから興醒め。

『真田丸』(テレビドラマ・日本)
 メジャーすぎる選択ですが、やっぱりこれを選んでおかないと。私が大河ドラマを最後まで観るなんてめったにないことなので。『清須会議』のつまらなさゆえに三谷さんの歴史ものを疑問視してましたけど、不安は初回で払拭されました。
 ウザいと批判されてたきりですが、私は好きでしたね。私は『真田丸』を幸村ときりの物語だと思って観てましたから。きりは実在したけど実像はまったくわかってません。きりという名前も三谷さんがつけたのだとか。史実に縛られないから、三谷さんは手駒として自由にきりを動かせるんです。たとえば幸村とガラシャはなんの接点もなかったはずですが、きりがミサに顔を出していたことにすれば、幸村と絡まずとも、自然なかたちでガラシャを登場させられます。コミックリリーフとしても活躍したし、物語全体を通して、きりは作劇上重要な役回りを果たしていたのです。
[ 2016/12/29 22:34 ] おすすめ | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
歴史の「普通」ってなんですか?

世間を渡る読書術

会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

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つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告