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奨学金制度に関するアイデア

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 確定申告直前になってから、普段つけない帳簿をまとめて記入したりするもので、バタバタしておりました。夏休みの終わりに絵日記をまとめて描くような。
 簿記の知識などまったくないので、パソコンの会計ソフトがなければムリですね。まさに、おまかせあれ~、みたいな。会社組織ではないので、使ってるのはなんとか奉行じゃありませんけど。

 身もフタもないことをいうようですが、教育の目的って要するに、国の税収を増やすためなんだよな、と税務署で申告の列に並んでるときに思いました。一般論として、国が国民の教育に投資すれば、国民の教育水準が上がって所得も上がる、そうなれば税収が増えて、国は教育に投資したぶんを税金として回収でき、国が豊かになる。
 でも日本政府はそう考えてないようです。日本の公的教育支出は他の先進国に比べてかなり少ないと、ずいぶん前から指摘されてきたにも関わらず、その問題はずっと先送りにしてきました。
 なんででしょうね。いまだに日本人は、大学などの高等教育は個人の贅沢だと考えてるのでしょうか。大学なんてのは、社会に出るまで4年間遊べるレジャーランドだなどと、昭和のころには盛んにいわれてたものです。
 でも現実問題として、東大生の親は金持ちだなんてことがデータで出ちゃってます。親の所得によってこどもの教育水準が決まる教育格差、ひいてはその後の所得格差は現実にあるんです。能力のある子が貧乏だから大学に行けないってのは、個人の不運で済まされません。国家の損失です。

 日本の奨学金制度はほとんど名ばかりで、実態は学費ローンにすぎません。ここはやはり日本の将来を担う若者のためにも、国が大学の学費を負担する返済不要の奨学金制度を作る太っ腹なところを見せて、未来に希望を持ってもらわなきゃ。
 才能ある若者が高等教育を受ければ、活躍する場も増えて国の税収もあがるはず。なのに、それを実行しようとしないのは、奨学金に投資したぶんを回収できないと踏んでるのでしょうか。
 そこでひとつのアイデアなんですが、こういう契約をしたらどうでしょう。「日本が返済不要の奨学金を提供する。ただし、その奨学金制度を利用した者は生涯にわたって、所得税を日本に納めることとする」。
 この契約の利点は、日本からの頭脳流出を心配する必要がないことです。大学卒業後に日本以外の国で働くことになっても、その人の所得税はずっと日本に納められることが確約されるのだから、長い目で見れば奨学金の投資分くらいは回収できるでしょ。その人がアメリカの大企業の社長にでもなれば、巨額のリターンが期待できます。契約があるから、タックスヘイブンを利用した脱税も阻止できるかもしれません。
 ただし実現には問題があります。私は税の専門家でないのでまちがってるかもしれませんが、現在の国際的慣習では、居住実態のある国(実際に生活している国)に税金を納めることになっているはずです。日本国が国民とこの契約を結んで徴税の権利を主張しても、相手国が了承しないことが考えられます。
 その場合どうしますかね。契約を「所得税、もしくは所得税に相当する金額を日本に納めること」としちゃいますか。そうすればその人は居住国と日本に二重に税金を払うことになります。
 なんか私、あくどい街金みたいなこといってます? でも、そうなる可能性も説明して承知させた上で契約するなら問題ないはずです。将来、日本より税金の安い国で働いてリッチになりたいと考えるなら、この奨学金制度を利用しなければいいんで、そのへんは賭けですね。
 どうでしょう。まったく煮詰めてない思いつきのアイデアにすぎませんけど、このくらい思い切ったことをやってみれば、日本の将来がもう少しおもしろくなるのでは。
[ 2015/02/17 21:25 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
歴史の「普通」ってなんですか?

世間を渡る読書術

会社苦いかしょっぱいか

みんなの道徳解体新書

日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

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