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富山新聞


雅子さま感想全文

 皇太子妃雅子さまが9日の誕生日に際し、宮内庁東宮職を通じて文書で発表された感想の全文は次の通り。(表記の一部は発表のまま)

 平成の御代(みよ)最後となる年の暮れが近づきます中、私にとりましては、平成5年に皇室に上がりましてから26回目となる今年の誕生日を、平成最後の誕生日として、深い感慨とともに、ある種の寂しさを感じながら迎えようとしております。

 26年近く前に皇太子殿下との結婚が決まりました時から、天皇皇后両陛下には、私を温かく迎え入れてくださり、今日まで変わることなく、広いお心でお導き、お見守りくださいましたことに、心から感謝申し上げております。これまで私がご一緒させていただいてまいりましたこの25年余りの日々を振り返りつつ、両陛下が、大きな責任を担われながら、どれほど深く国民の幸せや国の安寧を願われ、お力を尽くしていらっしゃったかということを改めて思い、敬意と感謝の気持ちでいっぱいになります。

 この先の日々に思いをはせますと、私がどれほどのお役に立てますのか心もとない気持ちも致しますが、これまで両陛下のなさりようをおそばで拝見させていただくことができました幸せを心の糧としながら、これからも両陛下のお導きを仰ぎつつ、少しでも皇太子殿下のお力になれますよう、そして国民の幸せのために力を尽くしていくことができますよう、研さんを積みながら努めてまいりたいと思っております。

 皇后陛下には、10月のお誕生日に際しましての宮内記者会からの質問へのご回答の中で、「これから皇太子と皇太子妃が築いてゆく新しい御代の安泰を祈り続けていきたいと思います」とおっしゃってくださいました。温かいおぼしめしに心から感謝申し上げます。これに先立ちまして、今年5月には、15年ぶりに出席がかないました全国赤十字大会で皇后陛下とご一緒させていただき、その折にも温かいお心遣いをいただきました。また、皇居紅葉山の御養蚕所を皇后陛下のご案内で拝見させていただき、皇后陛下が長年お心を尽くされてお続けになっていらっしゃいましたご養蚕についてお教えいただきましたことも、とてもありがたいことでございました。

 両陛下には、これからもお忙しい日々がお続きになりますが、くれぐれもお体を大切になさり、お健やかにお過ごしになりますよう、そして、遠くない将来に、お懐かしい思い出のたくさんおありになる現在の東宮御所にて、これまでのお疲れを癒やされ、穏やかな日々をお過ごしになることがおできになりますよう、心からお祈り申し上げております。

 今年1年、日本の国内外でさまざまな出来事がございました。2月から3月にかけて平昌(ピョンチャン)で開催されたオリンピック・パラリンピックでは、日本人選手がさまざまな競技で活躍し、多くの人に感動を与えるとともに、国内を元気づけてくれました。また、この秋、本庶佑京都大特別教授がノーベル医学生理学賞を受賞されたことは、日本国民にとっても、世界でがんの病と闘う人々にとっても、希望をもたらす喜ばしい出来事だったのではないかと思います。

 一方で、大変残念なことに、今年も多くの自然災害に見舞われた年でした。国内では、6月に大阪府北部で、そして9月には北海道で、それぞれ大きな地震が発生し、大きな被害が出ましたし、7月に西日本を中心に全国を襲った豪雨では、多くの方が犠牲になり、過去最大規模の被害が生じましたことに、とても心が痛みました。また、台風も次々と上陸し、各地で爪痕を残しました。

 国外でも、インドネシアでの地震津波や、アメリカ、ヨーロッパでの森林火災、洪水などが各地で発生しました。国内外でのこうした災害により、不幸にして命を落とされた方々のご遺族の皆さまの悲しみに思いを寄せ、心からお悔やみを申し上げます。また、被災された方々には、さまざまなご苦労が絶えない状況におられることを案じ、お見舞い申し上げます。

 このような自然災害との関連では、9月に皇太子殿下とご一緒して、昨年7月の九州北部豪雨で大きな被害を受けた福岡県朝倉市を訪れ、復興の状況を見せていただきました。現地では、復興が徐々に進みつつあることについて説明を伺った後、被災された方々が生活の再建に向けて懸命に取り組まれている姿を目の当たりにして、勇気づけられ、また、少し安堵(あんど)も致しました。一方で、今なお多くの方が、応急仮設住宅で不自由な暮らしを余儀なくされている状況に心が痛みます。被災された方々が一日も早く安心して暮らせる日が来ますよう、復興が順調に進みますことを心から願っております。そして、東日本大震災を含め、各地の被災地域の復興に、殿下とご一緒に永く心を寄せていきたいと思います。

 最近、国内では、子供の虐待や子供の貧困など、困難な状況に置かれている子供たちについてのニュースが増えているように感じており、胸が痛みます。世界に目を向けても、内戦や紛争の影響が、特に子供をはじめとする弱い立場の人々に大きく及んでいる現状を深く憂慮しております。10月にお会いしたユニセフのフォア事務局長からは、貧困家庭の子供たちに対する教育の拡充の必要性、グランディ国連難民高等弁務官からは、世界各地で難民や国内避難民が増え続けている現状などについて、それぞれお話を伺い、この問題の抱える深刻さに改めて思いを致しました。また、他にも、地球温暖化や環境汚染など、国際社会が一致して取り組む必要のある課題が多岐にわたっています。私たち一人一人がお互いを思いやり、広い心を持って違いを乗り越え、力を合わせることによって、社会的に弱い立場にある人々を含め、全ての人が安心して暮らすことのできる社会を実現していくことや、このかけがえのない地球を健全な形で将来の世代に引き継いでいくために、私たちが何をすべきなのか、それぞれが真剣に考えていくことが必要な時代になっているのではないかと感じます。

 来年には日本でラグビーのワールドカップが、2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されますし、このたび、2025年に大阪で万博が開催されることも決まりました。このような行事が、日本の社会に新たな活力をもたらし、個々の人々の可能性を一層開花させるとともに、日本と世界の交流や相互理解が深められていく機会となることを願っております。

 愛子は学習院女子高等科2年生になり、高校生活をとても楽しんでいる様子で、夏にはイートン・カレッジでのサマースクールや、秋には奈良・京都への修学旅行など、新しい経験もいろいろと積みながら、多くのお友達に囲まれて充実した日々を過ごしているように見受けられます。私自身の経験からも、この年齢での経験というものは、その後の人生にとっても貴重な財産となるのではないかと思いますので、愛子も、このように新しく視野を広げられるような機会に恵まれましたことはありがたく、私たちもうれしく思っております。愛子には、これからも感謝と思いやりの気持ちを大切にしながら、さまざまな経験を積み重ね、心豊かに成長していってほしいと願っています。両陛下には、日頃より、愛子の成長を温かくお見守りいただいておりますことに、改めて心よりお礼を申し上げます。

 私自身につきましては、今年結婚25年を迎えることができ、多くの方にお祝いいただきましたことをありがたく、幸せに思いますと同時に、この25年余りの間、本当にたくさんの方に助け、支えていただいてまいりましたことを改めて思い返し、感謝の気持ちを新たにしております。また、この1年も、皇太子殿下をはじめ、いろいろな方のお力添えをいただきながら、体調の回復に努め、少しずつ果たせる務めが増えてきましたことをうれしく思っております。特に地方訪問などの折に、訪問先や沿道で本当に多くの方から笑顔で迎えていただきましたが、皆さまから掛けていただいた声を身近に感じることも多く、そうした国民の皆さまのお気持ちは、私にとりまして大きな支えになっております。また、秋の園遊会でさまざまな方とお話をさせていただいた折にも、温かい言葉をお掛けいただきましたこともありがたいことでした。今後とも、引き続き体調の回復に努めながら、できる限りの公務に力を尽くすことができますよう、努力を続けてまいりたいと思っております。国民の皆さまから日頃よりお寄せいただいている温かいお気持ちに、この機会に重ねてお礼を申し上げます。