米国をはじめとする先進各国で、情報漏洩やサーバー攻撃を防ぐために中国製の通信機器を排除する動きが強まっている。主な標的は、中国最大の通信機器メーカーで第5世代移動通信(5G)関連の技術力に優れるとされる華為技術(ファーウェイ)と、同じく大手の中興通訊(ZTE)だ。
ファーウェイについてはここ数日で、目まぐるしい動きがあった。米政府の要請でカナダ当局が同社創業者の娘である孟晩舟・最高財務責任者(CFO)を逮捕したことが明らかになった。また、英BTグループがファーウェイ製品を基幹ネットワークに採用しない方針を表明した。
日本政府も、各府省庁や自衛隊の通信機器の調達について、安全保障上のリスクを重視した新指針を導入する方針だ。名指しは避けているが、やはり中国企業を念頭に置いた措置だ。
包囲網形成の起点は、今年8月に米国で成立した国防権限法だ。政府機関や政府と取引する企業にファーウェイなどの機器の利用を禁じた。米政府は日本など同盟国にも共同歩調をとるよう要請、オーストラリアやニュージーランドは同調した。今後は独仏など欧州大陸諸国の動向が注目される。
安全保障上の懸念があるなら、特定の製品に門戸を閉ざすのもやむを得まい。中国製品を使えば具体的にどんなリスクがあるのか、日本政府は米国から情報を得るとともに、自らも確認し、できるだけ情報開示してほしい。
加えて政府はNTTドコモをはじめ通信会社などにも調達指針を示すべきだ。通信キャリアの5G関連投資は来年から本格化する。安くて性能のいい中国製ネットワーク機器は通信会社にとって魅力的で、現にソフトバンクは中国製機器を大量に導入済みだ。
今後も機器の調達は企業の裁量に任せるのか、リスク回避のために禁止するのか。あるいはスマートフォンのような端末についても中国製に規制をかけるのか。5Gサービスの円滑な開始のためにも政府の速やかな判断が必要だ。
孟CFOの逮捕は米国が経済制裁を科すイランに製品を違法に輸出した疑いとされるが、米中2大国間の最大の火種に浮上し、世界の株価も動揺した。
他方で日本企業にとっては一連の環境変化がチャンスになる可能性もある。情勢を見極めて、したたかに対応してほしい。