水道の基盤強化のための改正水道法が成立した。低廉で良質な水道サービスは人々の生活を支える基本インフラだが、人口減で需要が縮む一方で、高度成長期につくった設備の更新投資が今後膨らむなど先行きに不安があった。
改正水道法は事業の広域化と官民連携の強化を2本柱に、今後も安心して使える水道の維持をめざす狙いだ。法改正を受けて、市町村や県による水道改革に弾みがつくことを期待したい。
水道サービスの担い手は市町村が中心で、全国に1400近い事業体がある。そのため個々の事業規模は小さく、投資余力に乏しい。職員の高齢化も進んでいる。
それを乗り越える一つの道筋が広域化による規模拡大だ。従来の市町村任せを改め、県が音頭を取って、広域連携を推進することを法律に盛り込んだ。
法改正に先立って今年春から1県1水道体制に移った香川県は、県内の71の浄水場を38に統合する。それで浮いたコストを耐震投資などに振り向け、災害への対応能力を高める計画だ。規模拡大によって、水質管理など専門職員の確保も容易になるだろう。
もう一つの柱が民間企業の力を水道事業に取り入れる官民連携の強化だ。改正水道法では自治体が水道施設の運営権を企業に委ねる、いわゆる「コンセッション」制度の仕組みを規定した。
「民」の知恵を生かすことで、漏水検知にセンサーを取り入れるなど、行政にはマネのできない新機軸の導入が期待できる。公営事業につきものの単年度主義から解放され、水道管の更新など長期計画も立てやすくなる。
浜松市の試算では公営のままでは今後25年間で水道料金が46%上がってしまうが、民間に委託すれば種々のコストが削減され、39%の値上げですむという。
もちろん行政の役割もゼロにならない。水質が適正に維持されているか、委託した企業が突然破綻して、水の供給に支障をきたすことはないか、などを監視する機能は残さないといけない。
水道を民間に委ねることに、不安を持つ市民がいることは理解できる。諸外国の先行事例から学ぶことも重要だ。他方で浄水場など個々の設備の運営を企業にまかせ、成功を収めた自治体もかなりの数に上っている。こうした事情を丁寧に説明し、住民の理解を得ながら水道改革を前に進めたい。