上場企業は役員報酬開示の透明性上げよ

社説
2018/12/5付
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日産自動車元会長、カルロス・ゴーン容疑者の逮捕は、日本の役員報酬開示のあり方への重い問いかけになった。役員報酬を誰がどう決めているのか。開示情報の充実によって透明性を上げ、企業統治の質を高める契機にしたい。

ゴーン元会長の逮捕容疑は自身の報酬を実際よりも少なく有価証券報告書に記載していたことだ。日産ではゴーン元会長1人に権限が集中し、報酬を決める権限も自身が握っていたとされる。

以前から日本は上場企業の役員報酬に関する情報が限られ、あいまいだという国内外の投資家の指摘があり、企業統治改革でも焦点のひとつだった。金融庁は金融審議会の報告を経て、2019年3月期から有価証券報告書で役員報酬の開示の拡充を求めている。

重要なのはまず誰が役員報酬を決めるかだ。報酬の総額は株主総会で決議され、その配分を取締役会に一任するが、実際は経営トップが配分を決める例も多い。自分で自分の報酬を決められるのではお手盛りとの批判は免れない。

金融庁のコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)は、独立した社外取締役を主要メンバーにした報酬委員会の設置を促している。報酬決定の客観性や透明性を高めるため、誰が報酬方針を決めるのかや、委員会の有無、活動状況が開示されることで、株主との対話の起点になるはずだ。

報酬の中身を見えるようにするのも大切だ。報酬の考え方や業績に連動する部分の内容、目標達成度の測り方といった詳しい開示が今後求められる。算出根拠が妥当か、実際の支払額がそれに沿うものかなど、外部から検証できるようになる意味は大きい。

企業統治改革は、業績や株価に連動する報酬を取り入れて相応に報いる方が、中長期に企業価値の向上を促すとの視点を軸に進んできた。ゴーン元会長の逮捕は報酬の変化に合わせた開示が整いきらない中で起きた。報酬委員会も経営トップを監督できる人材や仕組みでなければ効果は限られる。

報酬の水準よりも不透明さやインセンティブ不足が指摘される日本に対し、米英で強いのは高騰が続く報酬額への批判だ。金融危機後も高額報酬が変わらず、従業員との比較など開示強化を進めている。一方で細かな開示がかえって横並びの報酬上昇を招いたとの指摘もある。米欧の報酬開示の動きも見つつ議論を深めるべきだ。

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