日米欧に新興国を加えた20カ国・地域(G20)の首脳会議が閉幕した。保護貿易の抑止や温暖化対策の推進をめぐる主要国の結束を確認できず、国際協調体制のほころびが鮮明になった。
この枠組みが機能不全に陥ったままでは、世界経済の底上げや金融危機の封じ込めに支障をきたしかねない。2019年の議長国となる日本は、G20の立て直しに指導力を発揮してほしい。
アルゼンチンで開いたG20首脳会議は、体面を取り繕うのに終始した。首脳宣言すら採択できなかったアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の二の舞いは避けたものの、米国の反対で「保護主義と闘う」というメッセージを発信できずに終わった。
温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」については、米国の離脱表明を容認するような文言を盛り込まざるを得なかった。通商や環境などの世界的な課題に取り組むG20の劣化は深刻である。
外交や安全保障も例外ではない。ロシアによるウクライナ艦船の拿捕(だほ)やサウジアラビアの記者殺害について、真相の究明を強く求めたようにはみえない。経済問題を中心に討議する場とはいえ、この点でも疑問の残る首脳会議ではなかったろうか。
G20の首脳が一堂に会するようになったのは、08年9月のリーマン・ショックをともに協力して克服するためだ。だが危機から遠ざかれば遠ざかるほど国際協調のエネルギーは失われ、ついには米国をはじめとする「自国第一」の流れに抗しきれなくなった。
貿易戦争の長期化などを背景に、世界経済や金融市場は不安定さを増している。パリ協定や世界貿易機関(WTO)などの立て直しも急務だ。G20はその原点に返って結束を固め、国際社会の統治に責任を果たす必要がある。
トランプ米大統領は20年の再選を目指し、内向きの政策を推し進める公算が大きい。中国の習近平国家主席が異質な政治・経済体制を修正するとは考えにくい。
強権的な両氏に対抗するはずのメルケル独首相やマクロン仏大統領は、指導力の低下に苦しむ。G20の議長を引き継ぐ安倍晋三首相の責任は極めて重い。
日本が自由貿易や温暖化防止などの旗を振り、G20の存在意義をもう一度示すときだ。国際協調の砦(とりで)ともいえるこの枠組みを漂流させてはならない。