改革の行方問われる仏大統領

社説
2018/12/4付
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フランスのマクロン大統領が経済政策への反発に苦しんでいる。燃料税の引き上げに抗議する各地のデモが収まらず、死者や多数の負傷者を出す事態に発展した。

大統領の支持率低下も著しく、改革断行により経済の体質強化をめざす路線をどこまで貫けるか先行きが不透明になってきた。

ネットでの呼び掛けなどで広がったデモは3週連続して週末に実施され、1日にはパリで自動車に火を放つなどの騒ぎが起きた。今後さらに過激化して影響が深刻になれば、政府は非常事態宣言の発令も選択肢にする構えとされる。

マクロン氏は昨年の大統領選挙で清新なイメージを売りに39歳で当選した。競争力でドイツに水をあけられ、停滞感が長年続く経済を活性化するため、精力的に構造改革に取り組んできた。

企業活動のテコ入れに向け、法人税の引き下げや労働者を解雇しやすくする法改正を進めた。財政赤字の削減へ公務員を減らす方針も示した。今回のデモのきっかけになった燃料税引き上げは、重点政策である環境対策の一環だ。

だが、国民の痛みをともなう政策が多いだけに、やり遂げるのは容易でない。マクロン政権の発足後も経済は目立って改善しておらず、失業率は9%台と高い。労働者層には、富裕層のほうが恩恵を受けているという不満もくすぶっているようだ。

こうした政権に批判を持つ層の参加が増え、デモが拡大すれば、既に20%台にまで支持率が低落している大統領の政権運営は一段と厳しくなる。

マクロン氏は多国間主義の堅持を訴え、保護主義に傾斜するトランプ米政権と一線を画す。欧州連合(EU)の強化に向けた改革でも旗振り役を担っている。

ドイツでメルケル首相の求心力低下が鮮明になるなかで、マクロン氏も国内基盤の揺らぎが深刻になれば、世界経済や国際協調体制への影響は小さくない。改革の目的を達成しつつ事態をどう収拾するか、手腕が問われる局面だ。

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