政府の介入招いた携帯寡占

社説
2018/12/3付
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「国際的に見て割高」「料金プランが複雑で、よく分からない」などとされる携帯通信サービスについて、総務省の有識者会議が緊急提言をまとめた。

これまで総務省は望ましいサービスの形をガイドラインなどで示す誘導型の政策で携帯サービスの改善を促してきたが、成果はいまひとつだった。そこで今回は禁止行為を明確に規定し、それを守らない携帯会社には業務改善命令などの強制的な是正措置を課すことを検討すると踏み込んだ。

「民」の決める料金水準や販売手法に政府が口出しするのは本来、望ましいことではない。だが、携帯市場では大手3社の寡占の弊害が指摘され、消費者の不満の声も強い。通信自由化の流れとは一時的に逆行するとしても、政府が期間を区切って介入するのもやむを得ないのではないか。

来年秋には3社に続いて楽天が携帯市場に参入する。今回の提言の実行と「第4のキャリア」の登場を機に、携帯市場の競争機能を回復し、納得感のある料金水準やサービスの中身を実現したい。

提言では「通信料金と端末代金の分離」や「行きすぎた期間拘束禁止」などを盛り込んだ。

前者については、同じデータ容量のプランでも選ぶ端末によって通信料金の値引き額が変わるという不合理さの是正が目的だ。米アップルの端末は値引き率が高いことが多く、多数の人が自動的に同社製のスマホを選ぶことで端末市場の競争原理が損なわれていないか、という疑問にも応える。

期間拘束については、契約途中で解約する際の違約金の水準の見直しなどによって、事業者の乗り換えに伴うコストの引き下げをめざすという。

こうした政策目標は妥当だが、政府が企業の料金設定や営業政策に細かく口をはさむ事態が常態化すれば、各社の事業意欲の減退など新たな弊害が発生する点にも留意したい。規制強化は健全な競争環境を取り戻すまでの、あくまで時限的な措置であるべきだ。

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