海外の制度も参考に外国人政策を練ろう

社説
2018/12/1付
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外国人労働者の受け入れ拡大で参考になるのが海外の国・地域の取り組みだ。国内労働者の雇用・賃金への悪影響の防止や、外国人の生活支援で、シンガポールやドイツなどの政策にはみるべき点がある。参院での出入国管理法改正案の審議では、海外の制度も踏まえ議論を尽くしてほしい。

韓国は人手不足対策として2004年、政府が毎年の受け入れ人数枠を決め、単純労働分野への外国人の就業を可能とする「雇用許可制」を導入した。

政府系機関の韓国労働研究院の報告では、外国人労働者の流入により女性や高齢者を中心に賃金が下がる傾向がみられるという。新しい在留資格を設けて単純労働への外国人の就労に門戸を開く日本にとっても、自国の労働者への影響を抑えることは重要課題だ。

シンガポールは非熟練分野などで外国人を雇う企業を対象に、「外国人雇用税」を課すとともに、従業員に占める外国人の比率に上限を定める。税額と上限率は産業別に決め、外国人労働者の需給調整の仕組みになっている。

日本も受け入れ人数の調節に知恵を絞るべきだが、これまでの国会審議ではこの視点が乏しい。論議を深めてもらいたい。

外国人雇用税と似た負担金に、台湾の「就業安定費」がある。製造業や建設業などで外国人労働者を雇用する企業が、その人数に応じて納付を義務づけられる。台湾人の雇用確保のための職業訓練などに活用される点が特色だ。

雇用を安定させ、賃金上昇を促すには、働き手自身の生産性の向上が早道になる。日本も職業能力開発の強化が求められる。公的な職業訓練の充実策を政府・与党は示すべきだ。

外国人の暮らしを安定させ、社会に組み入れる社会統合政策ではドイツやフランスが先を行く。

ドイツは移民に600時間以上のドイツ語の学習機会を設け、自国の法律や文化も教える。フランスは日常生活での権利や義務も理解してもらう。日本の場合、外国人への日本語教育の仕組みを整えることが急務だ。

外国人の受け入れ拡大を円滑に進められるかどうかは生活支援体制がカギを握る。住宅の用意、病院と外国人患者の仲立ちをする医療通訳の確保、生活相談窓口の整備など、日本の課題は多い。社会統合政策をめぐる真摯な議論を与野党に求めたい。

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