半世紀以上も前に解決したはずの問題で日本企業の敗訴が再び確定した。日本による植民地だった戦時中に三菱重工業に動員された韓国人が損害賠償を求めた訴訟で、韓国大法院(最高裁)は同社の上告を棄却し、賠償を命じた。
新日鉄住金に対する10月30日の判決を踏襲した。日本企業への賠償命令が連鎖的に続く懸念が現実になりつつある。韓国で同様の訴訟を抱える日本企業は約70社に上るとされ、追加提訴への動きもある。原告側は対象企業の資産や債権の差し押さえも探っている。
元朝鮮女子勤労挺身(ていしん)隊員が損害賠償を求めた上告審でも三菱重工への賠償命令が確定した。事態収拾を遅らせればそれだけ修復も難しくなる。問題の解決に責任がある韓国政府は、早急に対応策を示すべきである。
歴史の経緯を確認したい。1965年の国交正常化の際の日韓請求権協定は、日本側が計5億ドルの資金を韓国に提供。両政府は10年の日韓併合条約の解釈や提供資金の性格をめぐる解釈の違いを乗りこえ、請求権問題が「完全かつ最終的に解決された」と確認した。
日本側は個人の請求権は消滅していなくても協定によって行使できない権利とし、韓国政府も国内法を制定して元徴用工に補償した。盧武鉉政権時代も元徴用工への補償は協定の対象に含むとの見解をまとめ追加支援も実施した。一方で、補償が十分でなかったとの不満の声が国内に残る。
従軍慰安婦問題でも日韓政府間合意に基づき設立された財団の解散を韓国が決めた。日本では韓国への失望感が強まっており、両国間の自治体交流が延期されたり、商工会議所の会議が中止されたりするなどの影響が出始めた。
判決が「不法な植民地支配」のもとでの「慰謝料請求権」は認められるとしたため今後、訴訟が広範囲に及ぶ恐れがある。対応策を自ら打ちださなければならないと韓国政府も自覚しているだろう。日本は主張を堅持しつつ、まずは相手の出方を見守るときだ。