【首都スポ】[高校ラグビー]ユース五輪で世界を驚かせた男 SH小西が桐蔭学園を単独Vに導く2018年12月8日 紙面から
第98回全国高校ラグビー大会(花園)は27日、大阪・花園ラグビー場で開幕する(来年1月7日決勝)。悲願の単独優勝に燃えているのが、桐蔭学園(神奈川)だ。強力FWを看板にした昨季は準決勝で敗れたが、今季はFWとBKが一体となってボールを動かす展開ラグビーに磨きをかけている。タクトを振るのは、10月のユース五輪(7人制)で世界を驚かせるランを連発し、銅メダル獲得の原動力となったSH小西泰聖主将(3年)だ。 (文・写真=大友信彦) 花園開幕まで3週間と迫った6日。横浜市青葉区の桐蔭学園グラウンドでは、選手たちが全国大会前恒例、グラウンドにVの字を描いて往復ダッシュする通称「Vラン」を繰り返していた。 「花園を戦い切る体力をつくるための練習です」。小西主将は目を輝かせた。 1日に行われた組み合わせ抽選会で、Aシードの桐蔭学園の初戦の相手は、大分舞鶴-深谷(埼玉)の勝者と決まった。 「相手はシード校じゃないけど、花園にいつも出ている伝統校と勝負できる。花園が、より楽しみになりました」 大分舞鶴は33年連続出場の名門。深谷も10回目の出場で、毎回のように上位勢を苦しめている実力校だ。昨年は初戦で飯田(長野)を120-0で圧勝したが、今季は初戦からタフな戦いになりそう。だが小西はむしろそれを歓迎している。 昨季は強力FWを看板に圧勝を続けたが、準決勝で大阪桐蔭に敗退。最後は自陣から8分間、64次攻撃まで攻め続けたが、あと1メートルで無情の反則。5点差で敗れた。
「負けた後はいろいろ考えました。SHとしてもっとコントロールできたんじゃないか。自分の力のなさを感じたけれど、成長させてもらえた試合でした」 あれから1年。成長した姿を見せる番だ。春の選抜大会では、決勝で大阪桐蔭と再戦し、FW・BK一体となった攻撃で46-26と圧勝。小西自身、50メートル独走を含む3トライで勝利に貢献した。 「去年はFWが努力して体を大きくして臨んだけれど、あと1メートル届かなかった。今年は全員で走り回る、桐蔭らしい継続プレーで勝負します。いろいろな状況で判断できるのが強みです」 自身のキャリアも高めてきた。10月にはアルゼンチンで開かれたユース五輪に日本代表で出場。6試合でチーム最多の6トライを挙げ、銅メダル獲得の原動力となった。スプリント力と鋭いステップは、2020年東京五輪の秘密兵器にも期待されるが、本人は? 「もちろんチャンスがあれば目指したい。自信にもなりました。でもまず目の前のこと。今は花園に集中します」 ユース五輪で学んだのは「ジャージーの重み」だった。 「日本代表を経験して、ジャージーの重みを感じました。桐蔭のジャージーも、歴代の先輩方の思いも背負って花園に立つという覚悟が必要だと思う」 さあ全国大会へ。1年からレギュラーの小西にとっては“最後の花園”になるが…。 「その感覚はないですね。毎年、そのチームで戦う最後の大会だし、今回も、この代の最後の大会という思いです」 とはいえ違う要素もある。花園ラグビー場は来年のW杯日本大会に向けて、改装工事が終了。今回は“新花園”最初の大会になる。 「それはみんなで話してます。『ここで勝てば新しい花園での優勝第1号だね』と(笑)」 10年度の東福岡との引き分け初優勝からはや8年。東の横綱は悲願の単独優勝を見据え、開幕まで3週間、牙を研ぎ続けるのだ。 <小西泰聖(こにし・たいせい)> 2000(平成12)年9月1日、東京都葛飾区生まれの18歳。167センチ、70キロ。小1のとき、葛飾ラグビースクールでラグビーを始める。立石中では陸上部に所属しながらベイ東京ジュニアラグビークラブでプレー。桐蔭学園高では1年からSHのレギュラー。今年は高校日本代表候補に選出され、ユース五輪では銅メダル獲得に貢献した。 ◇ 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」。トーチュウ紙面で連日展開中。
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