東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

岐阜の豚コレラ 拡大阻止へ瀬戸際だ

 岐阜県で家畜伝染病の「豚コレラ」がまた確認された。豚への感染は三例目。しかも県の畜産研究所施設での感染。これ以上の拡大を防ぐため防疫体制の徹底検証や感染経路の究明を急いでほしい。

 今回、新たに二頭の感染が確認されたのは、岐阜県美濃加茂市の県畜産研究所養豚・養鶏研究部。

 研究所は県産ブランド豚「ボーノポーク」の種豚の開発、生産農家への供給などを担う。県の畜産業界にとっては中核的な機関だけに、衝撃は大きい。

 専用の服装で豚舎に出入りするなど国の基準徹底はもちろん、ウイルス侵入防止のために独自の取り組みを強化してきたというが、地元の養豚農家が「これは人災。自分たちは毎日緊迫した状態で予防策を取ってきたのに」と憤るのも無理からぬ面がある。

 事の発端は九月である。国内では二十六年ぶりとなる豚コレラを岐阜市内の養豚場で確認。十一月中旬には同市畜産センター公園で二例目が判明した。同時に、野生イノシシへの感染も広がり、既に六十頭以上が確認されている。

 まず指摘したいのは、一例目の時の県の初期対応の甘さ、危機意識の不足だ。豚コレラと確定されるまでの半月余に豚の衰弱など幾つかの兆候があったのに、対応が後手に回った。

 今回の畜産研究所のことについても「防疫対策には十分取り組んでいるはず」(古田肇・岐阜県知事)と言うが、あらためて徹底検証するべきである。どんなことにも「完全」というのはむしろ珍しい。体制のどこかにあったはずの欠陥や見逃しをあぶり出す必要がある。

 野生イノシシの感染はまだ岐阜県内にとどまっているが、冬場は繁殖期で活動範囲も広がる。岐阜県の二十市町余り、愛知県の一部で禁猟措置を取ってイノシシの移動を促さぬようにしているが、他のあらゆる対策も講じてほしい。

 豚コレラは人にはうつらない。豚やイノシシ特有の病気で感染した豚の肉を食べても影響はない。

 だからいたずらに不安がる必要はないが、今後、もし感染地域が広がれば、各地の養豚業者への影響は少なくない。

 中国でまん延するアフリカ豚コレラの日本“上陸”も心配されている。最悪のシナリオとして、かつてのように予防策として豚へのワクチン義務づけの再来もあり得る。ここで豚コレラを封じ込められるかどうか。いわば瀬戸際に立っている。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】