モモです! 外伝集   作:疑似ほにょぺにょこ
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雲弧亭糞太郎様からのお題目
『ナーベ』『バハルス帝国』『金稼ぎ』を元に作成しました
まずは雲弧亭糞太郎様に二礼二拍手一礼してから読みましょうっ

御利益あるかもしれませんよ?


お題目短話-5 ナーベラル・γの帝国による被監視報告書

 ガタガタと乗合馬車が揺れる。何もない平原にうっすらと城壁が見えてくる。走れば数分も掛からない距離を、数日も掛けてゆっくりと馬車で行くのはなぜなのだろうか。

 今回の目的地であるバハルス帝国帝都アーウィンタールへと進む馬車に揺られながら私は静かに考えていた。

 

 

 

 

「バハルス帝国、ですか?」

 

 数日前、私は元々の活動拠点としていたナザリックにほど近いエ・ランテルの街に戻ることとなっていた。表向きは冒険者を続けるために。モモン様と別れて先にエ・ランテルにて仕事をするという体である。

 

「そうだ。表向きは金策──金を稼ぎにな。多少大きいとはいえ所詮エ・ランテルは街だ。それにリ・エスティーゼ王国自体、金の回りが悪い。そういう意味でバハルス帝国に行くのは何ら不自然ではない」

 

 簡単な討伐などをやって時間を潰しておこうと思った矢先、ナザリックにてアインズ様より下された命令は『バハルス帝国へ行け』であった。

 

「──ふむ。なるほど。そういう理由ですか」

「──?」

 

 アインズ様の本来の理由を察したのか、アインズ様の巨大な机の隣に立っていらっしゃるデミウルゴス様がしたり顔で頷いている。同じくアインズ様の隣に立っていらっしゃるアルベド様も微笑みながら頷いておられる。

 つまり金策はあくまで表向きの理由であり、本来の目的が何かあるという事なのだが。

 

「あの──それで私は何をすれば──」

「あー──だから、金策だ。金を稼ぐのだ。冒険者として」

「表向きは、ですね。アインズ様」

 

 金を稼ぐ。先日行われたデミウルゴス様扮する悪魔ヤルダバオトがリ・エスティーゼ王国に襲撃を行った時に、不正に金を貯めていた所等から金品を奪っている。この世界の通貨はそれなりに貯まっている筈である。つまり、早急に金を稼ぐ必要はないと思われる。なのに、金を稼ぎに行かねばならないのか。理解が出来ない。

 あくまでこの世界の通貨を入手するのは、ナザリックにある金貨が外に流出するのを防ぐという意味合いが強く、不必要に集める必要も無かった筈なのだ。

 しかしその疑問を口にすることはできない。私に命令した相手は絶対的な存在であり、敬愛すべき存在である。なにより私が理解できないというだけであり、その命令に何ら不都合は無いはずなのだから。

 

「私は──バハルス帝国でお金を稼げばいいのですね」

「うむ、その通りだ。頑張るのだ、ナーベラル・ガンマよ」

 

 

 

 

 

「はぁ──」

 

 今回の命令には何か裏がある。しかし、私には期待して頂けていないのか、その裏──命令の本質を教えては下さらなかった。聡明なお二方であればあれだけの情報で察することは出来るのかもしれないが、戦闘メイドたる私程度では察することも出来ない。

 口から零れるため息を噛み殺しながら視線を上げる。巨大な城門が視界一杯に広がり、その下を通る景色は圧巻の一言である。

 あくまで一般的な感想を言うのならば、という前提がつくが。

 

(なぜこんな脆い材質で拠点を囲っているのか全く理解できないわ──)

 

 魔法の一発、物理の一撃。どちらにしてもたったの一回で大穴を開けることなど容易いただの石を積み上げただけの壁。一体何の意味があるのだろうか。ゴブリンやオーク程度ならば防げるだろうが、アインズ様がモモンとして一撃で葬られたギガントバジリスクの一撃すら守れるのか怪しい。

 

「どうだい嬢ちゃん。凄ぇだろ?」

「そうですね」

「これが、帝都自慢の巨門さ!」

「はあ」

 

 今回の命令には何かしらの意味がある。私が好き勝手に暴れていい事案ではない程度には理解しているつもりだ。そのため、不必要に事を荒立てるわけにもいかない。

 例え、不躾に延々と話しかけてくる五月蠅い羽虫が居たとしても、だ。

 

「ご利用ありがとうございましたー!」

 

 馬車が停留所らしき広場で止まる。大したものすらない閑散とした場所。ただただ人が多いというだけの場所だ。

 

(もし好きに暴れていいと許可を頂けたなら、ルプスレギナ辺りを連れて来たら喜びそうね)

 

 あくまで『もし』だ。基本方針は人間とは敵対しないことになっているからこの許可が下りる可能性は限りなく低いだろう。だから『もし』である。

 乗車確認の割符を係員らしき人物に渡し、人込みから離れる。煩わしい。なぜこんなにも脆弱な者が溢れ返っているのか。少しばかり間引きしたほうが良いのではないだろうか。

 しかし行動に移すわけにはいかない。私はナーベ。漆黒の英雄たるモモンのパートナー。つまり、英雄の仲間なのだ。そう心に言い聞かせる。あまりにも面倒が過ぎるがアインズ様の命令なのだから。

 

(前の世界にも英雄と呼ばれた存在は大量に居たわ。至高の四十一人にすらも匹敵する者、コキュートス様やシャルティア様ですらも届かない境地に居た者も。でも──)

 

 ゆっくりと帝都へと視線を巡らせていく。

 その辺りに居るのは脆弱で惰弱な虫でしかない。英雄と呼べるものも、強者と呼べるものも居ない。しかしゼロではない。王国にエントマを撃退した冒険者が居たように、この帝国にも──

 

「もしかして、それが理由──?」

 

 確かにあの吸血鬼は王国の冒険者だった。ならばこの帝国でもその強者と呼べる者が冒険者をやっている可能性がある。もし冒険者をやっていなかったとしても、その者の情報は集められる可能性が高い。

 

「でも──」

 

 その程度ならばシャドウデーモンやドッペルゲンガーでもやれる事だ。戦闘メイドプレアデスの一人である私がわざわざやるようなことではないと思う。であるならば、もっと重要なことがあるはず──

 

「そこの貴方。あなた、帝国の人間じゃないわね」

 

 不意に呼ばれ、後ろを振り返る。明らかに他の者たちとは違う服装。いや、鎧を着こんでいる。前情報として貰って居た帝国兵の──特に上位の者のみが身に着けている者だと気付けたのは、私を呼んだ女と視線が合った時だった。

 

(迂闊──)

 

 その女は私に対する情報を何一つ持って居なかった筈だ。この人込み。決して帝国の人間だけではない。つまり、私以外にも帝国民以外の者がここには大量に居る。だというのに振り返ったのは私だけ。

 その結果に満足しているのだろう。女は悪意に満ちた満面の笑みを浮かべていた。

 

「あらあら、可愛い顔ね。まるで作り物みたい」

(私が──ドッペルゲンガーであることすら看破している──?)

 

 アインズ様には、決して人間を侮るなと何度も言われていたというのに。そもそも今回私が単独行動しているのも、ヤルダバオトとモモンが内通しているという噂が王国にあったからなのだ。そのためモモンであるアインズ様は王国から出ることはできないのだから。まさか私が人間ではないことすら簡単に看破する人間がこんなところに居るとは。全くの不覚である。

 

(──殺す?いや、それこそ相手の思うつぼだとアインズ様はおっしゃっていた。接触した後に死んだとすれば、その接触した相手──元々疑わしかった相手が犯人であると状況証拠を突き付けられることになると。どうする?)

「随分と警戒されたものね。別にとって食いはしないわよ。私は帝国四騎士の一人。『重爆』の二つ名を頂いているわ。レイナース・ロックブルズよ」

 

 簡単に自分の名と立場を言いながら私に近づいてくる。この女、私が人間でないことを確信しているのは間違いない。でなければ一々自分の立場をひけらかす必要などありはしない。自分の立場を私に知らせること。それはつまり──

 

(私は既に帝国にマークされているということ?)

 

 にこやかな笑顔のまま、女が私の手を取る。払いたければ好きに払えと言わんばかりに弱い力で。しかし動かないわけにはいかない。まだ決定的な証拠は無いのだから。まだ、完全に黒だと確信している筈は無いのだから。

 アインズ様曰く、確定しているならば捕縛なり殲滅なりしてくるはずだと言って居た。しかしわざと仲の良い振りをして近くに居ようとするのは相手の情報を引き出すのと同時に、相手にボロを出させるためだと。つまりこの女は私がボロを──自分を殺すことを狙って居るのだろう。

 

(危なかった──アインズ様に事前に情報を頂いて居なければ、私は大して考える事無くこの女を殺していたわ)

 

 弱いながらも、女は私の手をぐいぐいと引っ張っていく。一体どこへと連れていかれるのか。詰所か、牢屋か。いや、確定してないうちは捕縛しないはずだ。だとするならば、と思いながら引っ張られて10分程度。視線の先にあるのは見るからに汚らしい場所であった。

 

「ここ、私のお気に入りなのよ」

(雑臭が酷い。劣悪極まりない臭いね)

 

 頭の中にざらざらと臭いに関する情報が流れてくる。特に腐敗臭と黴臭が強い。アルコールと腐りかけた果物の臭い。これは人間であれば吐くのでは──

 

(しまった──!)

 

 気付けば女は私の方を見て居る。この場に慣れているこの女は我慢できるだろうが、そもそも帝国民ではない──この臭いに慣れていないであろう私はこの臭いに顔を顰めたり、吐くのが普通だろう。人間であるならば。

 『にぃ』と女の顔が歪む。全てが確認だったのだ。

 

「す、凄い臭いですね。あまり嗅ぎ慣れてない不思議な臭いです」

「あらそう?帝国の果物は匂いが強いものが多いけれど、とっても美味しいのよ」

 

 苦し紛れに話す私に、女はまるで何事も無かったかのように笑顔を向けて来る。そして不意に引っ張られた。二度の失敗は無い。私は突然引っ張られてバランスを崩したかのように見せかけてたたらを踏んだ。

 まるでそれを予測しているかのように、滑るように私の身体が運ばれていく。私が抵抗したら一体どんな状況になったのか。想像するだけでも恐ろしい。

 

「さ、着席っと」

「わ、わ──」

 

 慌てふためき驚いたふりをしながら、誘導されるままに席に着く。視線に映るのは──

 

「おぉ、かなりの美人!」

「ちょっとデレデレしてるんじゃないわよ、リーダー」

「──見ない顔」

「帝国では見ない顔ですな」

 

 見知らぬ男女四人。

 

「はい、新人さんよ。王国ではアダマンタイト級冒険者なんてお高くやっていたみたいだけれど、色々教えてあげてね」

 

 この四人とよろしくしろということなのか。自分の息のかかった子飼いの冒険者に。まるで蒼の薔薇を監視につけられたモモン様のようだ。しかしモモン様の状況とは違う。

 視線を女の方に、見上げるように向ける。そこにはとても嬉しそうな、暗い笑みを浮かべた女が居た。ちらりと隠れた顔半分が見える。ぐちゃぐちゃと音を立てるそこが。

 

(あれは呪いか。だとするなら恐らく自分に呪いをかけて、攻撃した相手に移すタイプ──攻撃してきた相手をカウンターで呪い、腐らせる呪いね。しかも恐らくドッペルゲンガーにも効くタイプを)

 

 やはり、女は私を知っていたのだ。最初から。だからこんな回りくどい行動をやっていたのだ。

 私が抵抗するなら呪いで対抗し、抵抗しないなら監視を付ける。全てこの女の掌の上で踊らされたわけだ。だとするならば、今アルベド様達に連絡を取るのは愚策。

 

(アインズ様達はこれら全てを察しておられた。だから、私がここでやるのは金策。金を稼ぐこと。つまり、冒険者として真っ当に動くこと。そういうことだったのですね、アインズ様)

「私の名はナーベ。チーム漆黒のアダマンタイト級冒険者よ」

 

 

 

 

 それから、一ヶ月が経った。あのフォーサイトとかいうワーカーチームは随分と勤勉に私を監視し続けている。まるで私が仲間だ、友達だと言わんばかりに馴れ馴れしく。

 結局アルベド様に連絡を送ることも出来ていない。常に監視の目があるのだ。アインズ様はこの現状を予期なされていた。であれば、監視の目を潜れるアイテム等を使ってまで連絡する必要はないだろうと思い今まで連絡できないでいるのだ。

 

(もう一ヶ月。そろそろアルベド様に連絡を取らないと──)

「ナーベさーん、起きてますかー?」

「ちっ──起きています」

 

 そう思う私に気付いているのか、凄まじいタイミングでドアがノックされる。思わず舌打ちが出たとしても仕方ないだろう。しかし恐らく舌打ちは外に居る人間にも聞こえている筈。私がボロを出すのを今か今かと待ち受けているのだから。

 

 

 

 

 

 

「《エレクトロ・スフィア/電撃球》」

 

 ナーベさんの魔法がモンスターたちの中央へと放たれる。第三位階魔法だ。第三位階魔法の筈だ。だというのに全く違う魔法を見て居るかのような錯覚を覚える。

 

「すげえ──」

 

 思わずため息交じりに声が漏れる。明らかに他ワーカーが使う魔法とは練度も速度も完成度も違う。まるで大人と子供だ。普通のマジックキャスターといえば必死になって魔法を放つ姿が普通だと言うのに、まるでお茶を飲む合間に放っているかのように自然に撃っている。

 

「これが王国のアダマンタイト級冒険者かぁ──やっぱ格が違うな」

「一緒に組んでくれているのが不思議なくらいね」

「──お陰で最近の稼ぎがすごいことになってる」

 

 オークたちの死亡確認を行った後に部位を切り取りバッグに入れる。この程度ははした金と見て居るのかナーベさんが行うことは無い。やはり金策と言っていたけれどほかに何か理由があって帝国に来ているのだろうか。

 

 

 

「つうわけでさ、どう思う?」

 

 その夜、いつもの酒場に集まってのいつもの会議。ちなみにナーベさんは、誘ったのだが早々に宿に戻ってしまった。

 

「アンタ、バカね」

「──言っていいことと悪いことがあると思う」

「あまり良いことだとは思えませんな」

 

 こう、影のある女性だとは思って居た。しかしここまで言われるほどの事なのだろうか。

 

「でもなぁ、気にならねえか──」

 

 

 

 

 

 

『──なんで第三位階魔法までしか使えないことにしてるか、とかさ』

「っ!?」

 

 酒場の二階にある部屋から《ラビッツ・イヤー/兎の耳》を使って奴らの話を聞いて居た身体が思わずびくりと震えた。まさか第三位階魔法までしか使えないというのが嘘であった事までバレていたとは思ってもみなかったのだ。

 

『──だから、わかった?』

『なるほどなぁ──』

(しまった──)

 

 驚きで集中が切れたからだろう。元々一階の酒場は非常に騒がしいのだ。そのせいで大事な部分が聞こえなかった。一体何の話をしていたのか。必死に話を繋げようにも、既に話題は大して意味のあるものとは思えない支離滅裂なものになっていたのだった。

 

 

 

 

「はぁ──ダンジョンですか?」

 

 それから数日。私は大した情報を得ることもなく、アルベド様に報告することも出来ないままに無為に日々は過ぎて行った。

 そして大して狩りに出る事無く昼も過ぎた、夕飯にはまだ早い時間。私は凄まじい情報を手に入れることが出来ていた。

 

「えぇ、ワーカー全員に募集がかかっているんです」

「出所は大丈夫よ。どうやら国が絡んでいるらしくてね、金払いもバッチリ」

 

 なぜ敵だと思って居る私にこんな情報を漏らすのか。確かに耳をすませばその情報がそこかしこで話されている。人の口に戸口は立てられぬと至高の御方はおっしゃっていた。どんなに情報を隠匿しようとしても、漏れるものだと。であれば、さっさと情報を渡せばいいと思って居るのか。いや、違う。

 

「ナーベさんも行きませんか?かなり美味い仕事だと思いますよ」

 

 これは踏み絵だ。

 何といえばいい。興味がない?金策していることになっているのに美味い仕事に飛びつかないのは何故かと疑問を持たれるだろう。

 リスクが怖い?アダマンタイト級冒険者として名を売っているのにそんなに臆病で良いのか。

 

「────行きます」

 

 結局選択肢など無かったのだ。断れないのを知っていて、私に二択を迫ったのだ。

 私にできることは、この情報をナザリックに伝えることくらいだ。もうアイテムが勿体ない等と言って居る場合ではない。

 

 

 

 

 

「どうしたんだ、ナーベさん。なんか妙に鬼気迫ってたけど」

 

 一緒に件のダンジョンに行ってくれる事となりほっとしたのも束の間。突然鬼気迫った表情でどこかへと行ってしまったのだ。

 部屋に戻るわけでもない。用を足しに行ったわけでもない。何も持たないままに外へと出て行ったのである。

 気になって立ち上がろうとするも肩を掴まれ、力任せに座らせられる。

 

「いって!もうちょっと、こう──やさしくなぁ──」

「アンタがデリカシー無さすぎるからでしょうが」

 

 痛む肩を擦りながら座りなおす。イミーナには何故いったのか分かったのだろうか。

 

「アンタだって聞いてるでしょ。アダマンタイト級冒険者チーム漆黒。常時ペアで動くペアチーム。ペアのお相手は王都から動かない。そして、王都ではついこの前悪魔に襲われて被害を受けた」

「──もう一つ言うなら、その悪魔を撃退した男の名前がモモン。つまり、漆黒のリーダーであり、ナーベさんのパートナー」

「あぁ!!」

 

 つまり王都で悪魔退治をやったが大怪我を負った仲間の治療費をこっちに稼ぎに来ていたわけだ。

 

「恐らく第三位階魔法までしか使えないって嘘をついているのもそのためね。第六位階魔法とかそれ以上使えるってバレたら、まず間違いなく帝国から出られなくなるもの。そのモモンさんって人も王都で英雄って呼ばれているらしいわ。そうそう帝国に来ることも出来ないのではないかしら」

「普段から気を張っているのもそのせいでしょうな。仲間の危機。急いで金を工面しなければならない状況。物見遊山に日和っているわけにはいかなかったでしょう」

「なるほどなぁ──あ、じゃあ今急いで出て行ったのも」

「──お金の工面の都合が出来た。その報告」

 

 あぁ、確かにと頷く。確かにそんな状況ならば急いで報告したくもなるだろう。であれば俺たちが出来ることは一つ。

 

「じゃあ気張りすぎないよう、帰ってきたナーベさんを温かく迎える、だな!」

「短い期間とはいえ一緒に仕事した仲ですからな」

「アンタ絶対ニヤニヤしそうだから気をつけなさいよ」

「──笑ったら吹き飛ばし決定」

 

 おいおいそりゃないぜと俺は大声で笑った。この一件が終われば大金が転がり込んでくる。ならばもう、冒険者をやる必要は無くなってくるかもしれない。恐らく今回の一件が終わればナーベさんは王都に、漆黒チームとして戻るだろう。つまり、今度の仕事が彼女との最後となるわけだ。

 

「よっし、頑張ろうぜ!みんな!」

「相変わらず熱いわねぇ、アンタ」

 

 

 

 

 

 

 

「監視の危険があり、直接報告となりましたことを謝罪いたします」

 

 どうやっても監視の目を潜ることが難しいと、疑心暗鬼となっていた私は結局、ナザリックに直接報告に来てしまって居た。見たところアインズ様もいらっしゃらない。恐らくアインズ様も監視の目が厳しいのだろう。

 

「監視の目が厳しい中、よく情報を持ってきました。貴方は続けて詳しい時期や規模を調べてちょうだい。くれぐれも、尻尾を掴まれない様になさい」

「はっ!」

 

 アインズ様は大丈夫なのだろうか。色々と思うところがあるものの、そんな私の思いなどアルベド様の想いに比べれば小さいもの。アルベド様がこうやって落ち着かれているならば、私が慌てるなど以ての外。

 

 

 何よりも──

 

「ナーベさん、お疲れ様です!」

 

 こうやって私の監視を続ける羽虫に愛想というものを振りまきながら頑張らないといけないのだから。

 

 

 

「くぅーっ!ナーベさんって無愛想だよなぁ──だが、それが良い!」

 




というわけで、ナーベさんの帝国のお話でした。
もっと軽い感じにする予定でしたが──やはりナーベはド真面目ですから。
ド真面目に明後日の方向向いてバカやってるのが似合いますね。







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